全 情 報

ID番号 05103
事件名 労災保険金不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 岩見沢労基署長(住友石炭奔別鉱業所ほか)事件
争点
事案概要  じん肺にかかっていた労働者の盲腸がんによる死亡につき業務上の死亡に当るか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法79条
労働者災害補償保険法7条1項
労働者災害補償保険法16条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1987年6月29日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (行ウ) 4 
裁判結果 棄却
出典 労働判例503号75頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 (三) 以上を総合して検討すると、じん肺あるいはその原因である各種粉じんの吸入と発癌との関連については、現在各種の研究及び検討がなされており、じん肺と肺癌との間には何らかの関連性があることを推測させるものがあるが、じん肺と本件で問題となっている盲腸癌との間に原因、結果という関係があることを認めさせるには困難である。
 そこで、亡Aの死因である盲腸癌が労基規則三五条三八号の規定する「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当するか否かについて判断すると、これを肯定するためには、亡Aが粉じんを飛散する場所における業務に従事していたことと盲腸癌に罹患したこととの間に相当因果関係が存することが必要であるというべきである。ここにいう相当因果関係とは、労基規則三五条三八号の規定する「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当するか否かという法的判断の一過程をなし、究極的には労災補償制度の趣旨・目的に照らして判断されるべきものであって、その立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうるに足りる蓋然性を証明することであると解すべきであるが、先に認定、判断したところによれば、亡Aが粉じんを飛散する場所における業務に従事していたことと盲腸癌に罹患したこととの間にこのような蓋然性があるものということはできないから、相当因果関係があるものと認めることはできない。