全 情 報

ID番号 05105
事件名 労災保険給付不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 江迎労基署長(住友石炭潜竜炭鉱)事件
争点
事案概要  じん肺にかかっていた労働者の脳梗塞による死亡につき業務上の死亡に当るか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法79条
労働者災害補償保険法7条1項
労働者災害補償保険法16条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
裁判年月日 1987年8月7日
裁判所名 長崎地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (行ウ) 2 
裁判結果 棄却
出典 労働判例504号65頁
審級関係 控訴審/05246/福岡高/平 1.10.12/昭和62年(行コ)16号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
 労働者が疾病により死亡した場合において、その疾病が業務上のものであれば、業務上死亡した場合に該当すると解されるところ、労働基準法七五条二項は、業務上の疾病の範囲については命令で定める旨規定し、これに基づいて同法施行規則三五条、別表第一の二が定められているので、亡Aの死因となった疾病が右別表に掲げる疾病に該当するか否かについて検討するに、同表第五号は、「粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和三十五年労働省令第六号)第一条各号に掲げる疾病」について定めているが、原告が本件において亡Aの死因として主張しているのは肺炎または脳梗塞であり、右に該らないことが明らかである。従って、本件においては、右肺炎または脳梗塞が同表第九号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当するか否かが問題となる。
 そして、亡Aが粉じん作業に従事していたことおよび同人がじん肺に罹患していたことは当事者間に争いがないところであり、従って、特段の反証のない本件においては、同人のじん肺は粉じん作業により生じたものと推認され、同人は右別表第五号に該当するものであるから、結局同人のじん肺ないしその法定合併症と同人の死因として原告の主張する肺炎または脳梗塞との間に因果関係が認められる限り、右死因となった疾病は右別表第九号の規定する疾病に該当するものと解すべきである。〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 八 以上のとおりであって、亡Aの死因は脳梗塞であり、これとじん肺との間に相当因果関係を認めることはできない(原告は、じん肺と死亡との間に合理的関連性があれば足りる旨主張するが、この見解は採用しない。)。従って、亡Aの死因は労働基準法施行規則三五条、別表第一の二第九号の「その他業務に起因することの明らかな疾患」に該当しないから、亡Aの死亡は業務に起因するものではないとして原告の労災保険給付の申請を却下した被告の本件処分は適法であり、その他これを取り消さなければならない違法は認められない。