ID番号 | : | 05109 |
事件名 | : | 労災保険給付不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 江迎労基署長(飯野炭鉱松浦鉱業所)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | じん肺(管理区分四)にかかっていた労働者の脳梗塞による死亡につき業務上の死亡に当るか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法79条 労働者災害補償保険法7条1項 労働者災害補償保険法16条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病 |
裁判年月日 | : | 1987年11月27日 |
裁判所名 | : | 長崎地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (行ウ) 5 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例508号50頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕 亡Aのじん肺と肺気腫との関連性の有無については評価が分かれている。そしてじん肺法は胸部エックス線写真像が第一型のものであってもじん肺による著しい肺機能障害があると認められるものについては、管理区分四としており、亡Aの著しい肺機能障害はその肺気腫によること前記認定のとおりであるから、同人が受けた管理区分四の決定は亡Aの胸部エックス線写真像が第一型であっても同人の肺気腫とじん肺との関連性を肯定しているものということができる。しかしながら、亡Aの右健康管理区分決定時において、その肺機能障害を来している肺気腫がじん肺によるものか、それ以外の原因によるものか詳らかに検討された資料はないところ、粉じん作業者にみられる肺気腫は粉じんでなく喫煙や職業以外の環境因子によるとする見解が有力であることも事実であり(〈証拠略〉)、また亡Aが若いころから死亡に至るまで喫煙歴があったことも前記のとおりで、しかも、じん肺特有の局所性肺気腫よりも一般の肺気腫の形がみられることからすると、同人の肺気腫が喫煙を原因とするものである可能性も否定することはできず、同人のじん肺と喫煙との双方が原因となった可能性もあり、この点は、亡Aについて病理解剖がなされていない以上、臨床的立場から判断するほかない。しかるところ、亡Aの胸部エックス線写真像が第一型で前記B、C両証人の供述に徴すれば、同人の肺気腫はじん肺以外の原因による可能性が強く、じん肺が影響したことが否定できないとしてもその程度は弱いものと判断されるから、同人のじん肺自体が重症であったと認めることはできないものといわねばならない。 〔中略〕 九 以上のとおりであって、亡Aの死因は心筋梗塞であり、これとじん肺に相当因果関係を認めることはできない(原告は、じん肺と死亡との間に合理的関連性があれば足りる旨主張するが、この見解は採用しない。)。従って、亡Aの死因は労働基準法施行規則三五条、別表第一の二第五号、第九号のいずれにも該当しないから、亡Aの死亡は業務に起因するものではないとして原告の労災保険給付の申請を却下した被告の本件処分は適法であり、その他これを取り消さなければならない違法は認められない。 |