ID番号 | : | 05112 |
事件名 | : | 休業補償給付等不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 名古屋北労基署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 症状の固定により休業補償給付の打切りの通知を受けた者が右通知処分の取消を求めて訴えを提起した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法76条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等 |
裁判年月日 | : | 1987年12月23日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (行ウ) 9 |
裁判結果 | : | 却下(控訴) |
出典 | : | 労働民例集38巻5・6合併号673頁 |
審級関係 | : | 控訴審/05196/名古屋高/昭63. 4.27/昭和63年(行コ)1号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕 およそ抗告訴訟の対象となる行政処分というためには、それが公権力の行使としてなされたものであつて、かつ相手方の法律上の地位ないし権利関係に直接何らかの影響を及ぼすものでなければならないと解されるところ、本件通知は、前記認定の事実からも明らかなとおり、原告の休業補償、療養補償等労災保険給付の請求に対して、これを不支給とする旨の被告の意思決定でないことはもとより、原告が現に継続して受給している保険給付を途中で打ち切る旨の意思決定でもなく、むしろ、一般に労災保険給付に関して診療関係者、受給者等について調査、監督し、その適正な施行を図るべき立場にある被告が、右調査活動の過程において、将来本件疾病につき原告から各種労災保険給付の請求を受けた場合に、これを支給するか否かの行政処分をする上で前提となる症状固定、治癒等の事実認定に関して、本件通知書に記載のとおりの認識、判断をもつに至つた旨の結果を明らかにし、併せて保険診療関係者、受給者等の今後の対処方の便宜を図つたにすぎないものであることが認められる。従つて、本件通知は、それ自体によつては原告の法律上の地位ないし権利関係に何らの影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分ということはできない。 3 もつとも、法的専門知識に通じない原告が、本件通知書の体裁や記載内容等から、本件通知によつて、これまで受給していた休業補償、療養補償の保険給付の支給を同書面に記載の日以降打ち切る旨の行政処分があつたものと理解し、そのため、あるいは労災保険給付の請求に関して何らかの事実上の不利益を受けたことも考えられないことではないけれども原告は本件通知があつた後、前記認定のとおり被告に対し休業補償給付の請求手続きを取り、これに対し被告が不支給決定をし、原告は同処分を不服として労災保険法上の審査請求手続きを経た結果、右不支給処分は取り消され、原告の休業補償給付に関する当面の不満は解消されていることが認められるうえ、原告は、本訴において強調するところの、本件通知及び前記不支給処分を通じて示されている、本件疾病の症状が固定している旨の被告の事実認定そのものに関して不満があるにしても、労災保険法上はそのこと自体を争う方法は認められていないところである。従つて、仮に本件通知によつて原告に何らかの不利益があつたとしても、それは単に事実上ないし反射的不利益にすぎないというべく、これをもつて原告の法律上の地位ないし権利関係に直接影響を及ぼすものとは認められないところである。 三 以上のとおり、本件通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないから、その取消しを求める本件訴えは不適法な訴えとして却下を免れない。 |