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ID番号 05114
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 宇徳運輸事件
争点
事案概要  第三者災害に関連して国が加害者に対して求償権を行使したケースで、自動車事故による負傷者の損害が示談契約により放棄されたかどうかが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法20条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係
裁判年月日 1965年11月13日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ネ) 1896 
裁判結果 認容(上告)
出典 訟務月報12巻1号33頁
審級関係 上告審/05125/二小/昭44. 3.28/昭和41年(オ)204号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕
 控訴人の損害賠償請求権の代位取得について判断する。成立に争いのない甲第七号証の一の一、三、四、同号証の二の一ないし三、同第八号証の一、二によれば、控訴人は、Aの本件事故による死亡をその業務上の事由によるものと認め、労働者災害補償保険法第一二条および第一五条により、同人の遺族であり、その葬祭を行つた同人の妻Bに遺族補償費として金六六万一、六〇〇円、葬祭料として金五七、六九六円(平均賃金の六〇日分)を昭和三四年四月六日に、療養補償費として看護費金一、一八〇円を同月八日に、同じく診療費として金四、三七五円を同月三〇日にそれぞれ支払つたことが認められる。よつて、控訴人は、同法第二〇条第一項により、右の保険給付をした日に同給付の額を限度として、受給者Bの被控訴人に対する損害賠償請求権を取得したものと認められる。しかして、Bは、右の保険給付がなされた当時被控訴人に対して前記のとおり金七六万二、二四七円の損害賠償請求権を有していたものであるから、被控訴人は控訴人に対して、右保険給付額に相当する七二万四、八五一円および右金員のうち七一万九、二九六円(遺族補償費および葬祭料の合計額)につきその支払のなされた日の翌日である昭和三四年四月七日から、一、一八〇円(看護費)につき同じく同月九日から四、三七五円(診療費)につき同じく同年五月一日からそれぞれ完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を有するに至つたものである。なお、Bが相続人である子二人の代理人兼相続人として被控訴人から金三〇万円を受領したことは、前に認定したとおりである。してみれば、Bが被控訴人に対して取得した損害賠償請求権は、金三〇万円のうち、少くともその三分の一に当る金一〇万円の限度で消滅し、前判示の金七六万二、二四七円から金一〇万円を差し引いた金六六万二、二四七円となり、被控訴人が代償として被控訴人に対し取得すべき債権もその限度であるかのように思われないでもない。しかし、みぎ金三〇万円の支払われたのは、控訴人がBに遺族補償費等の労災保険給付をした日より後である同年五月二七日であることは、被控訴人の主張するところである。また、一般に不法行為にあつては、不法行為者は、財産以外の損害についてもいわゆる慰藉料支払の義務があるところ、被控訴人がBに対して支払つた金三〇万円出金の趣旨が「死亡に対する償金」であることは、前説明のとおりであり、それがBらの取得すべき財産権上または非財産権上の損害のいずれに対してなされたものであるかは、被控訴人においてこれを明らかにしない。従つて、結局控訴人は、そのBに支払つた金額七二万四、八五一円の全額につき被控訴人に支払を求めることができるものと認めざるを得ない。