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ID番号 05116
事件名 損害賠償債務不存在確認請求上告事件
いわゆる事件名 多摩中央運送事件
争点
事案概要  事故が第三者の行為によって生じた場合で被災者・その遺族が加害者に対する損害賠償請求権を放棄した場合において、被災者に労災保険の給付を行なった国が加害者に対して求償することができるか否かが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法20条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
裁判年月日 1966年6月7日
裁判所名 最高
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (オ) 700 
裁判結果 一部認容・棄却
出典 訟務月報12巻6号885頁/裁判集民83号711頁
審級関係 控訴審/東京高/昭38. 3.11/昭和36年(ネ)9768号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 労働者災害補償保険法二〇条にいう第三者とは、被災労働者との間に労災保険関係のない者で被災労働者に対して不法行為等により損害賠償責任を負うものを指すと解すべきであり、すなわち、被災労働者に対する直接の加害者のみならず、民法七一五条により右加害者の使用者として損害賠償責任を負う者ないし本件のように自動車損害賠償保障法三条により自己のために自動車を運行の用に供する者として損害賠償責任を負う者を包含するものと解するのが相当である。されば、右と同趣旨の原判示(第一審判決理由引用)は正当であり、これに反する論旨(第三点前段)の見解は採用できない。
 ところで、労災保険金の受給権者が第三者の自己に対する損害賠償債務を免除することによつて残債務が消滅したような場合には、政府は、その後保険給付をしても、その給付額につき労働者災害補償保険法二〇条一項により損害賠償請求権を取得しないことは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和三七年(オ)第七一一号、同三八年六月四日当小法廷判決、民集一七巻五号七一六頁参照)、いまこれを変更する要は認められない。