全 情 報

ID番号 05124
事件名 労働者災害補償費不支給決定取消請求事件
いわゆる事件名 神戸西労基署長事件
争点
事案概要  得意先を招待してアクアラングを装着遊泳中に生じた死亡事故が業務上に当るか否かが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法12条1項(旧)
労働基準法79条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等)
裁判年月日 1969年2月25日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (行) 5 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 訟務月報15巻6号672頁
審級関係 控訴審/大阪高/   .  ./平成4年(行コ)20号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-会社行事(宴会、運動会、棟上げ式等)〕
 A社におけるBの経営実権者としての地位、フランス人二名の地位、及び現在の我国の取引の実態として予想し得るところから判断すると、BにおいてC、Dの二名のフランス人を既に予定していたアクアラング遊びに合流させ、一日の行楽をともにしようと計り然もA社が全体としての費用を負担する積りで準備に当つたということから見てBの気持に右両名のE社に対する発言力の大きさを考慮した経営上の配慮があつたとの一面は否定し難いといわねばならない。しかしながら前記認定のとおりアクアラングによる潜水遊技は、或る種の基礎的訓練を必要とし、危険防止の基本的鉄則も存在することからも判るように、或る程度の生命身体に対する危険性を伴う、所謂冒険的要素をも加味した意味で個人の趣味としての側面が強く、同好の士間の親近感を昂める効果はあつてもこういつたアクアラング遊びを共にすることは他人を招待する方法としては社会通念上一般的とは謂い難いし、然も本件にあつては前記認定から窺えるように、当日のアクアラング遊びは、既に一週間前に同好者の間で、前回の継続として実施が予定されていたものであつたところに、後でフランス人二名が合流したもので、同人らに対する親交を昂め、取引の円滑化に供するとの意図は極めて附随的、偶発的であり、然もその当時B自身が個人的趣味としてアクアラング遊びに興味を深めていたが、技術的には未だ初歩的で習熟者の指導を受ける程度であつたことから見ると、派生的意図の共存、費用負担の如何にかかわらず、Bの右事故当日のアクアラング遊びは、その本質としてB個人の私的な趣味の追及、余暇利用行為であつて、業務には該当しないと解せざるを得ない。もつとも、社会保険庁長官は原告に対する厚生年金支給の関係でBの死亡を業務上の死亡と認定しており、この事実は被告も認めるところであるが、右認定自体が本件についての前記の判断を妨げるものでないし、(証拠省略)から見ても、前記の判断に支障をきたすものとも考え難い。
 三、以上のとおりで、Bの死亡は業務の遂行中に生起したものでなく、即ち業務上の死亡に当らないと謂うべきである。