ID番号 | : | 05127 |
事件名 | : | 休業補償費返納金債権処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 福島労働基準局長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険法の休業補償の支給決定を取り消して返納金の納入告知および納入督促を求められた者が、右返納を求める「処分」の取り消しを求めた事例。 |
参照法条 | : | 行政事件訴訟法3条2項 労働基準法76条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等 |
裁判年月日 | : | 1969年5月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (行ウ) 139 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 行裁例集20巻5・6合併号644頁/時報559号81頁/タイムズ239号209頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 江橋崇・自治研究47巻11号125頁 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕 (一) 原告がA株式会社に雇傭されその営む坑道掘進事業に従事していたこと、原告が難聴という障害を受けたこと、右会社の右事業に労災保険法が適用されていたこと、平労働基準監督署長が昭和四〇年六月原告に対し、「原告が難聴という障害を受けたのは、坑道掘進に関する業務上の理由によるものでなく業務外の理由によるものであるから、すでになした労災保険法による休業補償給付支給決定を取消し、これを支給しない旨決定する。」との趣旨の処分をなし原告に通知したこと、以上の事実はいづれも当事者間に争がない。 (二) 右の事実と前記当事者間に争ない被告の通知及び督促の事実並びに弁論の全趣旨を併せ考えると、署長は、「署長が原告の右障害を労災保険法にいう業務上の負傷又は疾病と認めて休業補償給付七一、三九四円を支給したけれどもこの支給決定は右障害が業務外の負傷又は疾病である以上誤りである。」と考え、右支給決定を取消し改めてこれを支給しない旨決定し、原告に通知したので、ここに既支給の右金員は法律上の原因を欠く給付となつたと判断し、一方歳入徴収官たる被告(福島労働基準局長)は昭和四〇年六月原告に対し右不当利得金の返還を求める趣旨の納入告知(国の債権の管理等に関する法律一三条参照)を行ない、さらに昭和四二年五月二四日原告に対し福島基発第四二四号をもつて右金員の納入督促をしたというべきである。 (三) 右事実にもとづくと、原告が休業補償給付を受けたか否かは別として、被告のした右納入告知及び納入督促は、国がすでに支給したとする右給付が法律上の原因を欠き、不当利得となつたことを前提とし、その返還を求めるための国の請求に外ならない。本件給付返還請求につき国税滞納処分の例によるといえない以上、右納入告知及び納入督促は民法上の不当利得債権にもとづく請求及び催告にすぎず被告が一方的に原告の義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている行為でもないし、事実上そうなる可能性のある行為でもない。しからば被告の右納入告知及び納入督促は行政事件訴訟法三条二項にいう行政庁の処分その他公権力の行使に該当しない。 |