ID番号 | : | 05161 |
事件名 | : | 政府の自動車損害賠償保障事業による補償金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 自賠法保障金請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自動車事故により死亡(労働災害)した者の遺族が、加害者不明のため自賠法七二条に基づき保障金を請求したケースで、労災保険から支給される遺族年金の将来支給額の控除の当否が争われた事例。 |
参照法条 | : | 自動車損害賠償保障法73条1項 自動車損害賠償保障法72条 労働者災害補償保険法12条の8 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1975年3月25日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和48年 (ワ) 3190 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却(控訴) |
出典 | : | 時報801号61頁/タイムズ327号290頁/訟務月報21巻6号1219頁/交通民集8巻2号431頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 他方労災保険金中遺族年金が専ら労働者とその遺族の生活の保障を目的とすることは明らかである。その年金を受ける権利者をみると、まず遺族補償年金を受けることができる遺族として労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹中一定の要件を充足する者を列挙したが、その全部が同時に右年金を受ける権利ありとしないで、右列挙の順位で右年金を受ける権利を取得する、即ち、右後順位者は先順位者の死亡等による右権利喪失をまつてはじめて右権利を取得するものとされている。その年金額の算出方法をみると、右年金を受ける権利を有する遺族と、その者と生計を同じくしている右年金を受けることができる遺族の人数の区分に応じ、一人の場合原則として給付基礎年額の百分の三十とし、順次人数が増加する度に右割合を増加させ、五人以上の場合その百分の六十とされている。こゝに右年金の生活保障的役割が如実に示されている。しかし右年金を受ける権利を有する遺族と右年金を受けることができる遺族との両者は、私法上の損害賠償債権者と必ずしも一致しないから、労災保険法が右年金額決定に当り生計を同じくする遺族の数を考慮したからとて、年金受給権利者でない者の有する保障金請求権をも調整の対象と解されなければならないものではない。 以上の事項と、自賠法第七三条第一項の示す二重のてん補を排斥する公平の理念とを併せ考えると遺族の一人が遺族年金を受給する場合であつても受給権のない他の被害者の権利にまで影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。 |