全 情 報

ID番号 05166
事件名 療養補償給付不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 神戸東労基署長事件
争点
事案概要  クレーンのワイヤーロープの取替え作業中に足を踏み外して転落した労働者の大腿部の傷害につき治癒したとして療養補償が打ち切られたのに対して、労働者が右打切りの処分の取消しを求めた事例。
参照法条 労働基準法75条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付)
裁判年月日 1976年1月16日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (行ウ) 34 
裁判結果 認容(確定)
出典 労働民例集27巻1号3頁/時報811号111頁
審級関係
評釈論文 佐藤進・ジュリスト649号122頁
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕
 (一) ところで労働者災害補償保険法(以下労災保険法という)一二条で定められる療養補償給付が行われるのは、労働基準法七五条の事由が生じた場合、すなわち、労働者が業務上負傷しまたは疾病にかかった場合(同法七五条1)であり、一旦治ゆと認定された場合も業務上負傷または疾病の再発があれば、右再発も当然労災保険の給付対象となるのであるが、ここに再発とは、一旦治ゆ(治ゆとは、負傷の場合は創面がゆ着しその症状が安定して医療効果が期待できなくなったとき、疾病の場合は急性症状がおさまり、なお慢性症状が残っていても、その症状が安定して医療効果が期待し得ない状態になったときのことをいうものと解される。)とされた者について、その後にその傷病との間に医学上の因果関係が認められる傷病が発生したときをいうものであり、労災保険法による療養補償給付を得るためには、再発が治ゆによって一旦消滅した労災保険法上の療養補償給付義務を再び発生させるものである以上および前記治ゆの定義からみて、1、現傷病と業務上の傷病である旧傷病との間に医学上の相当因果関係が存在し、2、治ゆ時の症状に比し現傷病の症状が増悪しており、3、かつ治療効果が期待できるものでなければならず、かつこれをもって足ると解するのが相当である。
 また、右再発の要件1、の存否については、労災保険法が労働者の業務上の傷病等につき「迅速かつ公正な保護(同法第一条)」を目的としている点、および、再発が業務上の傷病の連続であり、独立した別個の負傷または疾病でない点に照らすと、旧傷病が現傷病の一原因となっておりかつそれが医学上相当程度有力な原因であることが認められれば足るものと解する。