全 情 報

ID番号 05167
事件名 遺族補償年金不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 佐伯労基署長事件
争点
事案概要  夫の死亡により遺族補償年金の支給を受けていた者がブラジル在住のAの養子になるとして養子縁組の届けをしたことに対して、労災保険法一六条の四第一項三号により遺族補償年金の支給をしない旨の処分を受けたため右不支給処分の取消を求めた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法16条の4第1項4号
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 遺族補償(給付)
裁判年月日 1976年2月10日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (行ウ) 1 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集27巻1号81頁/訟務月報22巻3号723頁
審級関係 上告審/05186/二小/昭53.11.20/昭和52年(行ツ)40号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-遺族補償(給付)〕
 そもそも同法による遺族補償年金は、労働者の死亡により被扶養利益を喪失した遺族に対し、それを填補することを目的として支給されるものであるところ事実上の養子縁組関係が受給権発生の前後を通じて続いている場合には、受給権者の被扶養利益の喪失状態に何ら変動がないから受給権を消滅させる事由は全く存在しないのに対し受給権発生前から事実上の養子縁組関係同様の事情にあつた者が、受給権発生後に右縁組の届出をした場合はそれによつて受給権者たる養子は養親の嫡出子たる身分を取得し、これに付随して、両者間の法定血族関係を基にした扶養関係、相続関係が生じ、ひいては、受給権発生後における受給権者の被扶養利益の喪失状態を解消する何らかの変動をきたすことは、一般的に考えられるところである。
 そうしてみると、同法一六条の四、一項三号が受給権の消滅事由として「養子となつたとき」を規定する理由は、受給権者に右事由が生じた場合は、具体的、個々的場合の財産状態の変動はさておき、一般に養子は、養親から扶養される場合が多いこと、新たな法律上の身分関係から生ずる扶養利益があること、養親らの財産について相続ができる状態になることなど養子たる受給権者の被扶養利益の喪失状態を解消するような変更が生じる場合が多いことを考えて、同条一項三号の事由の発生をもつて一律に受給権を消滅させることとしたものと解される。