ID番号 | : | 05171 |
事件名 | : | 労働者災害補償保険不支給決定通知処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東海飲料従業員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 飲酒のうえで勤務しようとして注意され同僚と口論したあと勤務についた会社守衛が右同僚から呼び出しを受け、守衛所の外でもみあいになりその際に転倒して脳内出血により死亡したケースで業務上か否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法79条 労働者災害補償保険法12条2項(旧) |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 暴行・傷害・殺害 |
裁判年月日 | : | 1976年12月7日 |
裁判所名 | : | 静岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (行ウ) 2 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 訟務月報22巻13号2934頁 |
審級関係 | : | 控訴審/05039/東京高/昭54. 3.28/昭和51年(行コ)91号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 法は、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、廃疾または死亡に対して迅速かつ公正な保護をするため、労災保険の制度を設け、政府がこれを管掌することとし、労働者を使用する事業を適用事業として、その保険料を事業主に納付させるとともに、業務上の事由による労働者の災害が生じた場合には、当該労働者またはその遺族等に対し、その請求にもとづいて一定の保険給付を行うことを定めている。 右のような制度の趣旨に照らすと、労働者の災害が業務上の事由によるものと認められるためには、労働者が労働契約にもとづいて形成された使用従属関係において行動している際に(業務遂行中に)、当該事業の業務運営に伴う危険によつて(業務に起因して)災害を被つたことを要しかつそれをもつて足る、と解するのが相当であり、さらに、業務遂行中に生じた災害は、業務に起因するものと事実上推定されるが、業務遂行中に生じた災害であつても、被災者の積極的な私的行為や恣意的行為によつて生じた災害は、業務に起因しないものとして、業務上の事由による災害から除外されるものと解するのが相当である。 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-暴行・傷害・殺害〕 原告は、Aが、かねて守衛長から受けていた飲酒者を就労させてはならない旨の命令を遂行しようとして亡Bを守衛所の外に連れ出し、就労の可否をめぐつて議論をしていた間に亡Bを転倒させたものであるから、本件災害は亡Bの守衛の業務と密接な関連を有する旨主張するけれども、前認定によれば、Aは帰り仕度をして守衛所を出たときには既に亡Bが当夜の夜間勤務に就くこと自体はこれを了承していたものであり、Aが亡Bを敢えて守衛所の外に呼び出したのは、もつぱらさきの口論に際して亡Bから侮蔑的な言辞を受けたことに対する欝憤を晴らすため、亡Bに対し一言文句を言おうと思つたからであつて、守衛所の外で互いに向き合つて立つていた間にも、格別飲酒して就労することの可否をめぐる議論がなされた形跡はないのであるから、原告の右主張はその前提を欠き、採用することができない。 3 以上によれば、亡Bの被つた本件災害は、業務遂行中に生じたものではあるが、その業務と関連のない亡Bの私的行為または恣意的行為によつて生じたものというべく、業務に起因しないものというべきであるから、これを業務上の事由による死亡と解することはできない。 |