ID番号 | : | 05200 |
事件名 | : | 公務災害認定処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 地公災基金大阪支部長(鳥取中学)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 学校行事の準備中に約二メートルの高さから五センチ角・約二メートルの角材が落ちてきたことによって頭頂部を直撃した事故について、頭頂部打撲挫傷および左眼網膜中心静脈血栓症等の公務起因性が争われた事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法26条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 災害性の疾病 |
裁判年月日 | : | 1988年8月1日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (行ウ) 9 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例523号21頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-災害性の疾病〕 3 次に、原告は、本件事故による外力、または外力と頭部外傷によるストレスによって、脳下垂体、間脳下垂体系に影響を及ぼし、その機能不全、機能低下を惹起し、その結果、ホルモンのバランスが崩れ、血液の粘性が増加し、そのために海綿静脈洞の循環不全が生じた旨主張するのでこの点につき判断する。 (一) 証人A、同B、同Cの各証言及び原告本人尋問の結果によれば、頭部外傷又は頭部外傷とストレスの複合により、脳下垂体への影響を与え、ホルモンのバランスが崩れ、血液の粘性が増加する可能性は医学上ありうるが、血液の粘性の増加は全身に影響を与え、通常はまず細い動脈に影響を与えるはずであり、海綿静脈洞にのみ症状が発症することは、医学上考え難いところ、原告にはそのような症状が現れていないことが認められる。 (二) 頭部外傷によって、原告の脳下垂体や間脳下垂体系が損傷を受けたことを認めるに足りる証拠はないし、原告のホルモンのバランスが崩れたこと、血液の粘性が増加したことを裏付ける証拠はない。かえって証人上Aの証言によれば、昭和五〇年五月の検査では、原告の血液の粘性は増加していなかったことが認められる。 (三) 昭和五〇年一月末の原告の生理は、量が少なく赤黒く、原告は粘り気が強く固くなっていたと感じたことは前認定のとおりであるが、このことが血液の粘性の増加を意味するとの証拠はない。 (四) 以上のことから、原告の血液の粘性が増加したとは認め難い。 4 証人A、同B、同Cの各証言及び鑑定の結果を総合すれば、次のとおり、認定判断することができ、これを左右するに足りる証拠はない。 (一) 網膜中心静脈血栓症の原因としては、高血圧症、動脈硬化、血液の粘性の増加等をあげることができるが、その大多数は原因不明である。 (二) 本件事故程度の外力によって直接左眼網膜中心静脈に障害を与えたとは医学上考え難い。 (三) 原告は、昭和四九年一一月から一二月ころと、昭和五〇年二月末ころ、左眼の視野の一部が見えにくいと感じたことは、前認定のとおりであるが、疲れたときや睡眠不足でもそのような症状が起こることがあるので、このことから、そのころ左眼に異常があったものと認めることはできない。 (四) その他の因果関係を想定しうるとする証拠はない。 5 以上認定判断のとおり、原告の主張する因果関係は、いずれも医学的可能性は乏しいものであり、それらの因果関係を示唆する検査結果等もなく、かえってホルモンのバランスが崩れた場合又は海綿静脈洞の循環不全が生じた場合に予想される症状が原告には認められないこと等からして、結局のところ本件傷病の原因は不明であるといわざるをえず、本件事故と本件傷病との因果関係の証明がなされていないことになる。 |