ID番号 | : | 05208 |
事件名 | : | 労働者災害補償不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 品川労基署長(中央田中電機)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電気工事士である労働者が残業中に便所でくも膜下出血により死亡した事故につき、業務上の死亡に当るか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条1項 労働者災害補償保険法16条 労働基準法79条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 |
裁判年月日 | : | 1989年3月1日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (行ウ) 103 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 時報1302号150頁/タイムズ700号180頁/労働判例537号51頁/労経速報1357号7頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高三小/平 3. 3. 5/平成2年(行ツ)193号 |
評釈論文 | : | 遠山廣直・平成元年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊735〕412~413頁1990年10月/岩出誠・判例評論367〔判例時報1315〕226~230頁1989年9月1日 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 疾病の発生につきいわゆる業務起因性があるというためには、業務と疾病との間に相当因果関係のあることが必要であり、労働者に疾病の基礎疾患ないし素因がある場合には、少なくとも業務がこれと共働原因となって発症をみたといえることが必要である。 すなわち、いずれの場合であっても、業務と疾病との間に法的な因果関係のあることが明確にされなければならない。そして、従来、基礎疾患等がある場合について、業務が共働原因となって早期に発症し又に(ママ)著名増悪したとか、あるいは業務が疾病の諸原因のうちで相対的に有力なものである必要があるとかいわれているのも、結局、法的因果関係の明確性のひとつの徴表として右のような事情を要求しているにすぎず、業務と疾病との間に法的な因果関係以上の要件として前記のような事情が必要であるとするものではないと解される。 また、この点については、労働基準法七五条に基づく労働災害補償責任が、無過失責任であり、また、労働者災害補償保険法における保険給付の主たる原資が事業主の負担する保険料とされていることからすると、業務起因性について、原告主張のように、通常の損害賠償制度とは別異に解して、相当因果関係ではなく合理的関連性があることをもって足りるとか、あるいはその存在について一定の事由がある場合には事実上の推定を働かせ、これを否定する立証がない限り業務上の発症と認定すべきであるといった考え方をとることはできず、被災労働者において業務と疾病の間の法的因果関係の存在を立証する責任を負うものと考えられる。 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 (二) 結局、以上を総合して考えると、Aの脳動脈瘤の形成ないし破裂については、業務が全く無関係であると断定することはできないとしても、それが共働の原因又は相対的に有力な原因にあたるとして、法的な意味で因果関係があると認めることは困難であり、むしろ、Aの脳動脈瘤は、同人に存した先天的要因に高血圧等の後天的要因が加わって形成され、さらにこれが業務とは直接に関係のない排便時の一過的かつ急激な血圧上昇によって破裂するに至ったとみるのがもっとも合理的であると考えられる。 |