全 情 報

ID番号 05233
事件名 療養補償給付不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 青梅労基署長(昭和石材工業所)事件
争点
事案概要  落石事故により頭蓋骨骨折、脳挫傷等の傷病をこうむり療養ののち治癒と認定されていたものにつき、約一六年後に「再発」したとして療養補償等の給付が認められるか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法75条
労働者災害補償保険法13条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 休業補償(給付)
裁判年月日 1990年1月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行ウ) 27 
裁判結果 棄却
出典 労働判例556号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-休業補償(給付)〕
 1 労災保険法における再発の概念は、原傷病の治ゆによって一旦消滅した労災保険法上の療養補償給付の権利を再び発生させるものであるから、再発によって労災保険法による療養補償給付を得るためには、治ゆ時の症状に比較して現在の傷病の症状が憎悪していること、現在の傷病と原傷病との間に医学上の相当因果関係が存在していること、治療を加えることによる効果が期待できるものであることが必要であると解するのが相当である。
 〔中略〕
 以上のいずれの証拠によっても、原告の現在の傷病の症状は、自覚症状としても原告が本件原傷病の治ゆ時に訴えていた頭痛、めまい、頚部痛、耳鳴り、体がふらつく、眼がつかれる、左眼視力低下、左上下肢のしびれ、根気がない、物忘れする、眠くて困る、性欲低下という症状と基本的に異なるところはないこと、他覚的所見においても本件原傷病治ゆ時のものと本件診療時のものには特段の変化はないことが認められ、結局原告の現在の傷病の症状は、本件原傷病の治ゆ時の症状に比較して憎悪したものとは認められない。
 3 次に、現在の傷病と本件原傷病との間に医学上の相当因果関係が存在しているといえるかについて判断するに、本件原傷病の治ゆ時から本件診療が最初に行われた昭和五七年三月二九日までの期間は一五年以上に及ぶこと、前記認定のとおり、この間原告は昭和四五、六年ころから昭和五二年ころまでプラスチック工場に勤務し、その後は昭和五五年二月二四日に建築現場で負傷するまでは建築請負業を自営していること、弁論の全趣旨によれば昭和四五、六年ころから昭和五五年二月まで原告は本件原傷病が悪化したとして診療を受けたことはないことが認められること等の本件原傷病の治ゆ時から本件診療に至る原告の症状の経過によれば、原告の現在の傷病と本件原傷病との間には医学上の相当因果関係は存在しないというべきである。