ID番号 | : | 05292 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄長崎駅事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 職場点検作業に従事中の助役に対する暴言等を理由とする懲戒免職処分が権利濫用にあたり無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1989年9月14日 |
裁判所名 | : | 長崎地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 5 |
裁判結果 | : | 一部認容棄却 |
出典 | : | 労働判例547号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 以上によれば、原告の前記就業規則の各懲戒事由該当の各行為が、通常の職場秩序が保持されていた労使関係において発生したものであれば、原告の前記の懲戒事由該当の非違行為は、到底、職場秩序に順応し難いものとして、原告は、免職処分により職場から放逐されてもやむをえない場合といえよう。しかし本件の場合においては、前述のような事情で、被告の職場秩序が分割民営化に向け、再編制への過渡期で、管理体制が強化されて労使が鋭く対立していた時期であって、長崎駅管理者の国労所属組合員である原告らに対する職場点検のありようも、徹底した職場規律の確立を計ろうとする余り、執拗に過ぎ原告らの反発を誘発せしめる態様のものであったことを考慮すべきである。そうすると、(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、原告には一〇年以上前の昭和五〇年二月二四日、長崎駅の助役に対し傷害を負わせ刑事罰として罰金一万円に処せられた件で停職三か月の懲戒を受けたのを初めとして、同六一年五月三〇日までの間に、別紙1の2ないし10記載のとおり、春季闘争、スト権奪還闘争、その他の闘争に参加指導し、或は業務の正常な運営を阻害したとして、減給三回、訓告五回、戒告一回の懲戒処分を受けていることが認められるが、長崎駅助役に対する傷害は一〇年前のもので古く、その余の懲戒はいずれも争議行為に関するもので前歴としては態様を異にしていることに鑑みれば、以上の懲戒処分歴を考慮してもなお、原告に対する免職の懲戒処分は、その原因となった行為との対比において甚だしく均衡を失し、社会通念に照らして合理性を欠くものということができる。従って、本件処分は、懲戒権者の裁量の範囲を超えた違法なものであり、無効というべきである。 |