全 情 報

ID番号 05297
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 東京毛皮貿易事件
争点
事案概要  派遣店員として勤務していた者がある時期より会社の指示にもとづく勤務をしなくなったものであり、会社には債務不履行はないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 1989年9月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 7852 
裁判結果 棄却
出典 労働判例548号53頁/労経速報1371号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 (4) ところで、原告がA店における勤務を辞退したことに関して、被告は、長期派遣店員見込者ないし見習者としての雇用契約を放棄し、短期派遣店員としての雇用契約を選んだものであるとして、右時点で別個の雇用契約が締結されたかのように主張する。しかし、当初から見込者ないし見習者として雇用されたかどうかはともかく、本件の雇用契約に期間の定めがないことは前述のとおりであって、勤務の場所やそこでの勤務の期間が変わったからといって、雇用契約そのものが別個のものとなる理由は見出し難いから(雇用契約の一部変更と見れば足りる。)、被告はなお、期間の定めのない雇用契約に基づき、原告に対し、その申し出があった以上は長期間である必要はないとしても、他の派遣先を指定して勤務させる義務があることになる。
 〔中略〕
 七 以上によれば、原告は、自らの意思でA店における派遣店員としての勤務を辞退した後は、原告の希望を入れた被告の指示に従い、数回にわたり短期間ずつ派遣店員の仕事をしたものの、その後の指示に基づく勤務を正当な理由がなくして拒否し、あまつさえ、一旦は承諾した勤務も途中で放棄したもので、原告の方に義務違反があるは格別、被告には雇用契約に基づく債務不履行はないと解するのが相当である。
 次に、不法行為の成否について見るに、被告が勝手に契約条件を変更しようとしたといえないことは、前述したところから明らかであるし、健康保険の資格喪失手続きをとったのは、原告が被告の従業員としての仕事をしなくなって、原告の負担すべき保険料の支払も不可能になった以上は止むを得ない措置であり、しかも、原告の承諾を得たものであることは、前述のとおりであるから、この点について違法はない。また、被告が原告の同業界における勤務を妨害したとか、被告の従業員が原告に対して「クビにする」との暴言を吐いたとの点については、原告本人尋問の結果中に符合する部分もないではないが、証人B、同Cの各証言と対比して採用することができず、他に、これを裏付けるべき証拠はない。