ID番号 | : | 05303 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 麓工業所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 炭鉱の従業員で組織する労働組合の幹部が長期の無届欠勤、作業所再開の妨害等の理由で解雇され、地位保全の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項 |
裁判年月日 | : | 1949年9月9日 |
裁判所名 | : | 長崎地佐世保支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和24年 (ヨ) 5 |
裁判結果 | : | 申請一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労働民例集5号112頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕 先ず申請人Aの解雇理由について考察するに、〔中略〕申請人Aは昭和二十三年十一月頃より炭鉱には殆ど姿を見せていなかつたが、会社は当時同人が組合書記長の地位にあつたので右欠勤は或は組合用務のためではないかとこれを黙認していたところ、昭和二十四年三月十三日の組合役員改選のため開催せられた臨時組合大会において、同人は当分他所属機関よりの帰鉱が不可能となつた事を理由に同人欠席のまま右役員を解かれ爾来一従業員として依然会社には無届のまま連続欠勤していた事実が一応認められる。尤も前顕B本人の供述でその成立を認め得る疏甲第四号証に依れば、昭和二十四年四月十九日附書面で組合から同人の同日より同年六月五日迄の間の休職願が提出された事実が認められるが、会社は左様な届は本人自身より、直接会社宛提出する様注意してこれを却下し、その後同人よりの右のような届は全く提出されていない事実が前顕C証人の証言より窺われ、他に右長期連続欠勤の正当な事由たる事実は本件では全く認められないところである。 然らば申請人Aの解雇理由中被申請人主張の如く許可なく他と雇傭関係を結んだその事実はしばらく措くとしても、右認定の如き無届長期欠勤の事実が正に解雇の実質的理由に該当することは成立に争のない疏甲第五号証(就業規則)の記載(同規則第八十五條第十一号)に徴し一応明かである。 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕 鉱員の人事に関する事項は経営協議会の協議事項であることが労働協約書第五条第三号により明定されている事実が認められ、而かも本件解雇が右経営協議会の協議を経なかつた事実は被申請人も認めて争わないところである。しかしながら果して各鉱員の解雇等の個別的問題について迄その都度経営協議会の協議を経由すべきかは右疏甲第六号証記載の経営協議会設立本来の目的に照し、或は同協約第五条に規定される他の協議事項との均衡上甚だしく疑問に思われC証人の証言を参酌すればむしろ、右に所謂人事に関する事項とは被申請人主強の如く更に根本的な人事に関する一般的基準を意味するものと解釈するのを一応至当と考える。尤も前顕B本人の供述によれば従来従業員の解雇につき会社と組合との協議によつて決定されたことが屡々あることが窺われはするのであるが、D証人の証言を参酌して、右に所謂協議とは前述の経営協議会の附議を指すものではなく、就業規則第八十一条に規定される表彰及び懲戒に関する会社及び組合間の協議を指すものとも認められるし、右のような事実があつたからといつて必ずしも前記解釈を動かすものではない。又仮りに本件の場合に経営協議会の附議を要するものであるとしてもそれは組合員の解雇については会社側の独断で行わず、一応組合に話を持ちかけるという程度のものであつて、必ずしも組合の同意を要するという趣旨のものでもなく、又その協議を経なかつたことが必ずしも本件解雇の無効を迄も招来すると解すべきいわれはなく、経営協議会設置の趣旨に徴すれば却つて、右につき被申請人の組合に対する責任の存否は格別各組合員個人に対する解雇の効力迄も左右するには足りぬと解するのが一応相当である。 |