全 情 報

ID番号 05307
事件名 行政処分取消請求事件
いわゆる事件名 岡村産業事件
争点
事案概要  労働基準監督署長が労働基準法八五条により行う審査または仲裁に関しては、取消訴訟の対象とすることはできないとされた事例。
参照法条 労働基準法85条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等
裁判年月日 1951年3月14日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (行) 36 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集2巻1号101頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕
 次に右法律第十八条の規定が原告主張のような趣旨のもので進んで事業主に対し災害補償の責を負担させる権限を与えたものではないこと原告主張のとおりである。ところで中村労働基準監督署長がそれを原告に負担させた決定は正式の決定というべきものではなく単に同署長が原告の請求を棄却する際その職務上勧告的にさような文言を附加しただけのものにすぎないことが成立に争いのない甲第一号証の文言並に証人Aの証言により明らかであつてこれに反する証拠はない。のみならず仮りにそれが正式の決定であるとしても労働基準監督署長としてはさような決定をする権限がない訳のものでもない。すなわち労働基準法第八十五条によれば同署長は業務上の死亡の認定その他補償の実施に関し職権ででも審査ができることとなつているからさような決定も勿論その権限内のことであるといわねばならないからである。その上さような決定はもともと勧告的なもので労働者あるいは使用者が任意にそれに従わない限りはそれ等の者に対し直接権利を与えあるいは義務を負わすような特別の法律上の効力を有するものではなく只不服のある者が進んで労働者災害補償審査会の審査を請求しないしは訴を提起するための前提要件とされるだけのものである。すなわち本件において原告はその決定により災害補償をすべき法律上の義務を負担させられた訳のものではない。従つてそれはいわゆる行政訴訟で訴の目的とされるべき行政処分にはあたらないといわねばならない。しからば原告主張のその余の点につきいちいち判断するまでもなくこの決定に関する原告の主張もまた採用できないものであることが明らかである。