ID番号 | : | 05336 |
事件名 | : | 仮処分控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 全駐労北海道地本千歳支部組合員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全駐労の組合員であった者が剰員を理由に解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 労働組合法16条 日米安保条約第3条に基く行政協定に伴う民事特別法1条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇権の濫用 解雇(民事) / 解雇の自由 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項 |
裁判年月日 | : | 1954年10月22日 |
裁判所名 | : | 札幌高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和29年 (ネ) 71 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働民例集5巻6号808頁 |
審級関係 | : | 一審/札幌地/ . ./昭和28年(ヨ)313号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕 本件労働協約第十五条においては「次の各号については協議会で協議決定しなければならない」として協議事項として十二項目の事項が列挙され、その第五項目に「雇入及び解雇退職に関する事項」があげられているけれども、右の規定の文言の解釈上「箇々の解雇」の具体的場合についてまで協議決定を経なければならない旨を定めたものとは即断しがたく、又右条項において「解雇」に関する事項と列記してある「雇入に関する事項」の解釈についても、箇々の具体的雇入に当つても前示協議を経なければならない趣旨とは到底首肯できない点から考えて、ひとり解雇の具体的場合にのみ右協議を経なければならないと解することは困難であり、〔中略〕本件労働協約の締結された昭和二十七年十一月以前においては昭和二十五年一月締結にかかる労働協約(以下旧協約と略す)がその効力を有していたものであるが、右協約第十五条においては、「次の各号については協議会で協議決定をしなければならない」との文言の記載があり、その協議事項として十一項目が列挙され、その第五項目に「雇入解雇に関する事項」なる文言の記載があり、その解釈については、雇入及び解雇に関する一般的規準についてのみ協議するものであつて具体的な解雇を一々協議会において協議事項としてとりあげ、しかるのち右協議に基いて解雇を決定しなければならないとする趣旨でないことは、協約当事者間において従来一致した解釈であつたことが一応認められるのであつて、上叙の諸点に照して考えるならば原審証人Aの証言中本件協約第十五条第五号の趣旨についての控訴代理人の主張に沿うが如き証言部分はにわかにこれを措信しがたく他に右認定を左右するに足りる証拠がない。のみならず前示各疎明によれば、本件協約第十五条第五号も亦、解雇に関する一般的規準の決定に当つては労働協議会の協議決定を経なければならない旨を定めたに過ぎないものと解される。従つて雇用主たる被控訴人としては解雇に当つては本件協約第十五条によつて現に定められている基準に従つて解雇の措置をとれば足りるものというべく、本件においては右協約第十五条による一般規準の定めとして協約当事者間においては「人員整理の手続に関する指令」と題する人員整理時の順序方法の基準の協定があつたので、被控訴人は右の協定に従つて解雇の手続を進めたことが成立に争いのない疎乙第三号証、原審証人B、同Aの各証言によつて窺われるから、結局本件解雇が本件協約第十五条第五号に違反したものであるとする被控訴代理人の主張は理由がない。 〔解雇-解雇の自由〕 一般に労働者の解雇については控訴人主張の如き正当事由の存することを要することを必要とする明文の定めがなく、又解釈上とくにこれを必要とする理由も認めがたい。したがつて解雇に正当事由の存することを前提として本件解雇の無効を主張する控訴人の主張はその理由がない。 〔解雇-解雇権の濫用〕 本件解雇が控訴代理人主張の如く、被控訴人において雇用主としての前示の責を果さず、駐留軍の前示人員過剰を理由とする整理の要求をそのまま鵜呑みにして解雇の挙に出でたものとは、控訴代理人の全立証を以てするもこれを認めがたく、反つて被控訴人としては後述のとおり現実の条件の制約の下に可能な限りの努力を尽した事実を認めることができるのである。〔中略〕本件においては、前示認定の如き被控訴人の努力にも拘らず、控訴人等の解雇要求は遂に全面的撤回を見なかつたものであるから被控訴人としては結局控訴人等を解雇せざるを得なかつたものとみるべきであつて、格別解雇について遺憾の点があつたものとは認めることができない。ことに「日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」に基き強力な基地管理権を有する米国駐留軍において、被控訴人の前示要請にも拘らず、前示の如き内容の要求を固執して殆んど譲らなかつたものであるから、被控訴人としては本件解雇は真にやむを得ないものであつたというべきであり解雇権の濫用といい難い。 |