ID番号 | : | 05345 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 神戸証券取引所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 同僚に対する暴行を理由とする解雇につき、暴行は就業規則所定の解雇事由における重大なものとはいえず、かえって組合活動を理由とする解雇であって不当労働行為に該当するとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働組合法7条1号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言 解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1955年3月17日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和30年 (ヨ) 21 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集6巻2号180頁/労経速報167号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行〕 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕 ところで被申請人は、申請人の前記暴行傷害の行為は、(イ)申請人が申請外AをBビルに連行して吊し上げた事実、並びに(ロ)クラブ資金を不正に使用した事実等と相俟つて、就業規則第三十六条第三号又は第四号に該当するから、これを理由として解雇したものであつて不当労働行為ではないと主張し、 〔中略〕 申請人が昭和二十七年七月頃の夜間に、当時左翼団体の占拠していたBビル屋上で同僚Aを難詰したこと、並に昭和二十八年頃従業員の厚生機関であるクラブの映画割引券購入資金を一時他に流用したことの疏明があるけれども、右各疏明資料によれば、右Bビル屋上の事件は所謂吊し上げ等の異常な名称を以て呼ばれる性質の事件ではなくむしろ同僚間の個人的な論争に過ぎないこと、並に右クラブ資金の流用はその後申請人においてこれを補填して実害なく、いずれも特に問題となることなく既に二、三年を経ていることが疏明せられ、従つて被申請人において今ことさらにこれを採り上げて解雇事由とするほどの理由もなく、被申請人の右主張は結局申請人の前記Cに対する暴行傷害が就業規則第三十六条第三号第四号に該当するものであるとする一点に帰するところ、既に疏明せられたように暴行に至つた経緯は被申請人の業務執行とは関係なく専ら組合活動、私行に関する同僚間の対立に起因するものであり、申請人は一旦はCの不誠実な態度に激昂した余り同人に暴行を加えたけれども、直ちにD等に制止せられて極めて短時間に終り、結局治療一週間程度の打撲擦過傷を与えたに止まつた事実と、証人E、同D、同F(その一部)、同G(同)の各証言により疏明せられる従来市場係従業員は慣行として午後三時過頃一時休憩していたこと、右暴行の場所も労働組合事務所として使用している室内であつて、従つて右暴行により直接に余人の執務を妨げ又は外来者の耳目に触れるなど経営秩序に特に重大な障碍を生じたこともなかつたこと、並に被申請人取引所の従業員間において以前にも暴行事件があつたが解雇せられることはなかつた事実を綜合して考えると、右のような事由を以ては未だ被申請人取引所の就業規則第三十六条第三号、第四号に所謂、「重大なる過失又は不正行為をなしたとき、その他業務上已むを得ない事由があるとき。」とある条項には該当するに足らぬものと判断するほかはないから、被申請人は申請人の右行為を以て解雇の決定的原因となす意思であつたものとは到底認められず、従つて被申請人の主張は前記推測を覆すことが出来ない。 そうすると結局本件解雇は不当労働行為に該当し無効であると云わなければならない。 |