ID番号 | : | 05349 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 小田原製紙事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 長期間反覆して会社の許可なく食堂を使用して集会を催し、宿泊をし、外来者を守衛の制止に反して入門したことを理由とする諭旨解雇につき有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働組合法7条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1955年4月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和27年 (ヨ) 4029 |
裁判結果 | : | 申請却下 |
出典 | : | 労働民例集6巻3号273頁/労経速報174号7頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 ところで通常の場合就業規則所定の解雇事由に該当する行為が解雇に価するというのは、就業規則違反が相当程度に重大なものであつて、解雇するについて社会的に妥当の価値判断がなされ得ることを要するものと解するのが相当である。そして本件就業規則の第五十八条に於て、懲戒は譴責、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇の五種と定め、第六十二条には懲戒事由に該当する行為があつた場合でも行為者の情状においてやむを得ない特別の事由があるときは減罰し若しくは懲戒を免ずることがあると規定しているのは、右の趣旨を表明したものというべきである。 よつてこの見地において申請人等が前記(1)の所為に出た事情を考察するに、昭和二十六年十二月二十六日賃上げ等を目的とした争議の解決当夜会社東京工場附近でたまたまA巡査殺害事件が勃発し、翌二十七日組合員B、Cの二名が、更に昭和二十七年一月七日組合員D、E、Fの三名が、続いて同年二月十三日組合員G、H、I、J、Kの五名が、同月十八日L、Mの二名がそれぞれ逮捕され、東京工場内外の捜索が行われたことは当事者間に争がなく、そして疏明によれば、右犯罪事件の容疑が組合員にかけられ、続々検挙される事態に立ち至り組合は極度の混乱に陥つたので、申請人等組合幹部はその善後措置を講ずることを余儀なくされたこと及び組合には会社東京工場裏門附近の工場敷地内に広さ約六坪の組合事務所を貸与されていたが、右事務所は工場正門から約二百米の地点にあり、右のような急の事態に際し外部との連絡に不便を感じたに反し、工員食堂は正門から約五十米で暖房の設備があり、夜勤の従業員(組合員)の休憩所とされていたので、組合員相互の間ばかりでなく、逮捕された組合員の家族及び外部の応援団体との連絡にも便利であるため、申請人等はこの工員食堂に集り、情報の交換をなし、引続いて宣伝等の文書を謄写印刷して夜を徹したことが認められるけれども先に申請人Nの項に於ても認定したように、O工場長から数回に亘り組合の食堂使用を禁ずる旨の会社の命令が伝達されたにも拘らず、申請人等がこのように長期間に及んで右命令を無視して使用を続けたことは、会社経営秩序を維持するためになされた会社の命令に対する重大な違反であつて解雇に価する所為というべく、このような所為に出た事情が前記のように組合員に対し犯罪の嫌疑がかけられこれが対策を講ずるためであつても申請人等が就業規則違反の行為に出るについて酌量すべき特別の情状となすことはできないし、その他特別の情状を認めるべき疏明はない。 なお、申請人等の行為は、個々の行為を各別に考察の対象とするときは、それだけで諭旨解雇の事由となすことは酷に過ぎると考えられる程度の就業規則違反であるが、これ等の行為を反覆してなした事実から推せば企業に対する反価値的性格が強度に表明されたものというの外なく、結局会社が申請人等に対して以上の各行為を理由として諭旨解雇の処置に出たのは、その余の解雇理由につき判断するまでもなく相当であると断ぜざるを得ない。 |