全 情 報

ID番号 05369
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 三菱電機事件
争点
事案概要  短期労働契約を更新してきた臨時工に対する雇止めにつき、期間の定めのないものになっているとはいえず、契約更新拒否の意思表示が権利濫用になるとはいえないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
民法529条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1964年1月29日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ヨ) 216 
裁判結果 申請却下
出典 労働民例集15巻1号26頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 契約更新拒絶についての正当事由の不存在ないしは権利の濫用の主張についての判断
 前述のように同一内容の契約が反覆更新されている場合、契約を終了さすには特に更新拒絶の意思表示が必要であるが、これをなすにつき一般に正当事由の存在が必要とするものとは解せられない。尤も長期間に亘り契約が更新されている場合雇傭されている者の期待権的地位は或る程度尊重されなければならないが、この期待権的地位が永続雇傭に対する合理性を有する場合は格別であるが、前述のように臨時工が本工になるには新たに採用試験を経なければならないのであつて、訓練生や見習工のように本工として養成されたものとは異り、当然本工昇格を期待し得る地位にいるわけではない。従つてその期待権は二カ月の契約更新に対するものに過ぎないものと言うべく、正当事由を必要ならしめる根拠とはなし難い。
 本件についてみると前掲各疎明によると前記認定のほか、被申請人主張の二の(二)記載のような事実が疎明されるので、申請人が就業以来真面目に勤務していたとしても、被申請人のなした契約更新拒絶の意思表示が権利の濫用になると認めることは困難であり、他にこれを認めるに足る疎明はない。尤も、被申請会社Yでは、昭和三七年三月二一日にも中学新卒業者から女子見習工を多数採用していることは前述のとおりであるが、証人A、同Bの各証言によると、右は例年どおり昭和三六年八月から職業安定所を通じて募集を始め、翌三七年正月早々に選考試験を行い直ちに採否を決定して、通知したもので、時期的にその取消が困難であり(申請人の雇止めを決定したのは同年三月中旬である)、又熟練工として技能の伝承向上をはかるために女子見習工の採用が必要であつたことが疎明されるから、申請人等臨時雇の雇傭を継続するため女子見習工の採用をそれだけ取止めることもできなかつたものといわなければならない。
 そうだとすればこれらの点に関する申請人の主張はいずれも理由がなく、右契約更新拒絶の意思表示は有効だといわなければならない。