ID番号 | : | 05394 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 運輸省第一港湾建設局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 運輸省第一港湾建設局発行の局報号外に掲載された停職一カ月の懲戒処分の理由の一つに虚構の事実があったとして、被処分者に対する名誉毀損が認められた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 信義則上の義務・忠実義務 |
裁判年月日 | : | 1964年9月8日 |
裁判所名 | : | 新潟地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (ワ) 474 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 下級民集15巻9号2149頁/訟務月報10巻11号1495頁 |
審級関係 | : | 控訴審/04345/東京高/昭42. 8.30/昭和39年(ネ)2197号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-信義則上の義務・忠実義務〕 従つてA所長及びB次長が被告側主張のとおりの記載ある診断書の存在したことを奇貨とし、たとえ書類バサミが打ち当つたとしても単なる暴行にとどまつたのにかかわらず、原告に対する処分権者たる第一港湾建設局長Cに診断書記載のとおり受傷した旨を申告し、同局長も事件の真相を十分調査することなく、そのまま停職一カ月の徴戒処分の理由の一つとしたと考えられる。かくてA所長及びB次長、C局長等の過失による違法な職務の履行に因り、原告は打撲症を与えてないにもかかわらず「三日間の安静加療を要する左顔部打撲症を負わしめた」旨を処分理由の一つとされたものというべく、そしてこのことが第一港湾建設局が昭和三五年一〇月初旬発行した局報号外(末尾添付のとおり〔略〕)に処分理由の一つとして掲載されて、その局報号外が全国の港湾建設局その他に配布された結果、第一港湾建設局所属職員はじめ全国の各港湾建設局の関係職員に周知徹底されることとなつたことは当事者に争のないところであるから、原告が名誉の毀損を受けて精神的苦痛を受けたということは明らかであるので、被告国は国家賠償法第一条により原告に対し右の慰藉をなすべき義務があるというべきである。 そこで損害額について検討するに、 〔中略〕 原告は停職一カ月の懲戒処分を受けたことに対し人事院へ不利益処分審査請求をしたが、結局処分理由第4項、即ち本件係争の打撲症の存否について「原告の所為に因りB次長が三日間の安静加療を要する打撲傷を負つたという事実はとうてい考えられないところであるけれども、書類バサミを押し飛して同次長の身体に当たらしめた行為はきわめて乱暴な行為であつて、団体交渉停滞状態を打破する意図に出たとしてもその限りに於て責任を問われてもやむをえない」という趣旨の理由で、他の処分理由と共に、結局停職一カ月の処分は人事院において承認されたことが認められる。更に原告が書類バサミを押し飛した事実及びその前後の事情は既に説示したとおりであつて、冒頭認定のような原告の地位その他諸般の事情を参酌すると被告国が原告に対し支払うべき慰藉料は金五万円をもつて相当と認める。 |