ID番号 | : | 05405 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 粕谷商事事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 専売公社が第三者の不法行為により死亡した職員遺族に死亡退職金を支給した場合、普通退職金と、これと死亡退職金の差額についても第三者に求償することはできないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 死亡退職金 |
裁判年月日 | : | 1964年12月9日 |
裁判所名 | : | 東京地八王子支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (ワ) 96 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 訟務月報11巻7号973頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-死亡退職金〕 そこで死亡退職金が支給されるのは公務上死亡した場合であり、その場合他人の不法行為によつて出損を余儀なくされた者はその填補を請求し得るものとすることが私法体系の根本をつらぬく公平の理念に適合するものと解し得られなくはない。 しかし退職金制度は沿革的には我国ではのれん分け、見舞金、慰労金、餞別金等の名称により人情としてあるいは恩情として賜つたものであるが、資本主義経済の発達とともに恩恵的なものから次第に功労報償的なものとなつたもので死亡退職金に於ても永年勤続に対する報償的性格には何等変りはなく唯公務中の死亡という特殊条件によりその支給額に相異があるにすぎないものであるから死亡退職金と損害賠償金の両利益を死亡者の遺族に保有させるものと解し、たとえ死亡者の遺族が第三者から損害賠償を受けたとしても国はその遺族に対し死亡退職金の支払義務は免れないものというべく又一方その遺族が国から死亡退職金の支給を受けたとしても第三者のその遺族に対する損害賠償義務に何等消長きたさないものというべきである。 よつて国が死亡者の遺族に対し死亡退職金を支給したからといつてその遺族に代位して第三者に対する損害賠償請求権は取得し得ないものと解する。 更に原告に被告等に対する本訴請求は自転車の毀損により損害賠償請求以外は訴外Aに代位してなす求償請求権であり被告Yの不法行為により死亡退職金の出損を余儀なくされた原告として、これが直接の損償賠償請求についてはその主張はなく又法規に規定はあるとは云え公務上死亡した死亡退職の場合が普通退職の場合よりその退職金の額が多額となるということは特段の事情のない限り第三者に予知し得ないところである。 そうだとするといずれにしても死亡退職金と普通退職金の差額金五二七、〇七五円については被告等は原告に対し損償賠償義務はないものというべきである。 |