ID番号 | : | 05406 |
事件名 | : | 債務不存在確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 内山電業社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地方公共団体は、その職員に対し労働基準法に基づく災害補償をした場合、第三者に対する職員の損害賠償請求権を取得するとされた事例。 |
参照法条 | : | 民法422条 労働基準法75条 労働基準法77条 労働者災害補償保険法20条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係 |
裁判年月日 | : | 1964年12月24日 |
裁判所名 | : | 山口地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (ワ) 40 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 下級民集15巻12号3088頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕 ところで、〔中略〕Aは本件事故当時被告の一部門であるB児童相談所に勤務しており、事故当日午前一〇時頃一時保護児童Cを山口市立D中学校に入学させるべく電話で折衝をし、直ちに同人を山口市(略)所在の右中学校まで連れて行くこととなり、同相談所備え付けの本件原動機付自転車を持ち出しその後部座席に同人を乗せ、豊栄通りを下り東山通りに出る際本件事故によつて受傷したことが認められる。ゆえに、Aは被告の公務執行の途上において本件事故により負傷したものといわなければならない。 〔中略〕Aの使用者である被告は昭和三四年一月九日までに同人に対し労働基準法第七五条第七七条の規定に基き療養補償として金一五万四一四七円、障害補償として金五一万五六九二円を支払つたことが明らかである。 被告が原告に対し損害賠償として右支払にかゝる合計金六六万九八三九円の請求をしていることは当事者間に争いがない。しかして、労働基準法・地方公務員法等には国家公務員災害補償法第六条及び労働者災害補償保険法第二〇条のごとく公務上の災害に対する補償をした場合地方公共団体たる被告が職員の第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する旨の明文の規定の存しないことが明らかであるけれども、補償の原因である災害が第三者の不法行為によつて発生したものであるときは、被害者が地方公共団体の職員である場合国家公務員の場合と異り明文の規定の存在しないことを理由として補償をした地方公共団体が職員の第三者に対する損害賠償請求権を取得することを否定すべき実質的合理的根拠はないと考えられる。従つて、職員に対し労働基準法に基く補償を行つた地方公共団体は、民法第四二二条の規定を類推し、その補償の価額の限度で被害者たる職員に代位してその者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得するものと解するのが相当である。 さすれば、被告はAに対し右金六六万九八三九円の補償をしたことにより前段認定にかゝる同人の原告に対する金四五万円の損害賠償請求権を取得したものというべきである。 |