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ID番号 05407
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 損害賠償請求事件
争点
事案概要  障害補償とは別に労働能力の喪失による損害賠償が認容された事例。
参照法条 労働基準法77条
労働基準法施行規則40条3項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労基法との関係
裁判年月日 1965年2月1日
裁判所名 長崎地島原支
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ワ) 84 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 訟務月報11巻9号1289頁
審級関係 上告審/最高二小/昭42.11.10/昭和41年(オ)600号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労基法との関係〕
 原告は訴外Aが本件事故により左膝関節部及び左足関節の用廃、左大腿部下腿短縮等の障害を残したとして、昭和三二年七月二日附基発第五五一号本省労働基準局長より各都道府県労働基準局長宛通達(甲第三六号証の二)に基き、右障害が労働基準法施行規則第四〇条第三項の併合認定の規定により同規則別表第二身体障害等級表の第五級に該当するところから、右等級の労働能力喪失率一〇〇分の七九、訴外Aの平均余命年数三一、一一、月給二五、〇〇〇円の三ケ月の平均賃金日額八一五円二一銭を計算の根拠としてホフマン式計算法により労働能力の減少による将来うべかりし利益の喪失による損害金の現在価格が金二、八六一、六三〇円であると算出主張するのであるが、一般に労働能力の減少による損害賠償額を算定するためには、労働能力の減少によつて具体的にどれほどの収入減を生ずるかどうかによつて、換言すれば事故がなかつたならば得たであろう収入から減少した労働能力によつて得られる収入を控除した額によつて算出すべきものと解するを相当とするから、労働基準法施行規則別表第二による障害補償を行うべき身体障害の等級から割出した前記通達における労働能力喪失率が仮りに正鵠を得たものであるとしても、身体障害者の経済的活動状況殊に職業の性質内容と労働能力減少による経済的影響を具体的に検討して右労働能力喪失率が収入減少の率に照応すると認めるのを相当とするのでなければ、労働能力喪失率を決定的な基準として労働能力の減少による将来うべかりし利益の喪失による損害金を算定する原告の採用する算定方法は直ちに採用できがたいものと考える。
 〔中略〕訴外Aは大正八年九月二二日生れであつて、昭和二二年四月一日、漬物、佃煮の製造卸販売を業とする前記株式会社Bに入社し、本件事故発生当時右会社に日雇ではなく常用の従業員として勤務し、漬物、佃煮の製造作業、原料の買出しに従事し、賃金支払方法は週給、日給、時間給、出来高払制、その他請負制ではなく月給制で月額金二五、〇〇〇円の収入を得ており、本件事故によつて傷害をうけ、その傷害治療のため昭和三二年一二月一日から昭和三四年七月三一日まで右会社を欠勤したが、その後は従来どおり右会社に勤務し従来の作業に従事していることが認められ、この事実と弁論の全趣旨によれば訴外Aは本件事故による労働能力の減少によつて前記(二)以外に格段の収入減を生じていないことが窺われるのであつて、本件全証拠によつても、訴外Aが本件事故がなければ得たであろう収入と減少した労働能力によつて得られる収入との間に原告主張の労働能力喪失率に照応するような収入減の存在することを認めうる資料がないから、労働能力喪失率を決定的な基準とする原告主張の損害額算定方法によつては訴外Aの労働能力減少による将来うべかりし利益の喪失による損害額を確定することはできない。
 そうすると、訴外Aは本件事故によつて前記(一)の入院治療費に要した損害金四三四、一六四円及び前記(二)の得べかりし利益を失つたことによる損害金五〇〇、〇〇〇円合計金九三四、一六四円の損害を蒙つたことが認められるところ、前記二において認定したとおり、本件事故発生については、被告案浦に焼酎の飲酒をすすめ被告案浦が飲酒して運転する本件自動三輪車の助手席に同乗し、本件事故発生直前被告案浦に対し突然車の後方を注意させるようなことを言つた訴外Aにも過失の存在が認められるので、訴外Aの過失を斟酌するときは、その損害賠償額は金七〇〇、〇〇〇円を以て相当と認める。