ID番号 | : | 05409 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 前田建設工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労災保険法による遺族補償に加えて損害賠償の請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法16条 自動車損害賠償保障法3条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1965年3月5日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (ワ) 1725 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 時報404号43頁/タイムズ184号138頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 被告の共働者の原則の主張は採用できない。 自動車事故による運行者の責任は、自動的で意志をもたない機能のすぐれた機械の本質上、放置乃至誤用があれば人に対し極めて危険な自動車の走行使用に関し、経済的社会的に最も強い管理制御の力を及ぼす実質上の支配者に管理使用上の責任を負担せしめたものであつて、企業利益を共有する共同事業者乃至それに準ずる関係にある者ならばともかく、少くとも日給を以て労務を提供する一介の労働者である亡定信と被告との間に共働者の原則を適用し得べくもなく、まさに亡Aは自動車責任上の他人に当るというべきである。 たまたま、英米法上、共働者の原則の存在が同地における工場労働者の災厄保険制度の促進にあずかつて力あり、また我が国で企業内部の従業員も使用者責任における第三者に当るむねはじめて判旨した当時、右判決が労災補償などの諸制度が不備であつたわが国の労働者保護の役割を果した事実があつたとしても、現在労働者保護の社会保険制度が発達の途上にあるからといつて因果関係を逆転せしめて共働者原則の適用、使用者責任の第三者の範囲の縮少をはかるべき理由は全く存しない。むしろ資本主義社会の発達によつて労働者は、使用者に対する第三者の色彩を強くして行くのが実情である。 また労災保険の強制適用を受ける事業主の責任は保険金の給付限度にとゞむべしとの被告の論拠たるべき法条も存しないし、右有限責任の根拠としてのべる高額の保険料と称する本件事故発生の工区における被告納付保険料金一、七六六万円余は、事故如何によつては人の死亡による損害をも或いは補うに足り得ないような数額のものであつて、しかも直接被告の亡A、原告らに対する法律的関係にないから、被告のこの点に関する主張も検討するに値しないものである。 |