ID番号 | : | 05415 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働基準法による障害補償に加えて、得べかりし利益を損害額として認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法77条 労働基準法79条 民法709条 民法115条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労基法との関係 |
裁判年月日 | : | 1965年6月30日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和38年 (ワ) 9357 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 下級民集16巻6号1160頁/時報418号16頁/タイムズ178号121頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労基法との関係〕 得べかりし利益 原告は、本件事故によつて左大腿下部を切断するに至り右傷害は、労働基準法所定の身体障害等級第四級に当り、従つてその労働能力喪失率は、九二パーセントであるところ、原告が昭和三七年度の所得として確定申告をなした額が金四九〇、〇〇〇円であるから、その九二パーセントをその生涯に亘つて喪失したと主張する。しかしながら右に所謂労働能力喪失率なるものは国が労働者災害補償保険法第二〇条第一項の規定に基き第三者に求償すべき場合の損害額の計算について定められた行政上の画一的な基準であるにとどまり、得べかりし利益の喪失による個別的現実的な損害を算定するについては一応の基準となし得るにしても、それ丈で直ちに右の割合による得べかりし利益を喪失したものとすることができないことは多言を要しない。而して本件原告のように片足を切断した場合にはその業種の如何により(例えば肉体労働者であるかどうか)相当額の減収を来すべきことを推認し得るし、又原告本人は、事故前の売上が月額約三、〇〇〇、〇〇〇円、事故後のそれが半減して約一、五〇〇、〇〇〇円、利益が売上の二割であると供述するが、〔中略〕 昭和三七年度における原告本人の所得額が金三五〇、〇〇〇円、昭和三八年度におけるそれが金三七六、二五〇円として確定申告されていることを認め得るのであり、確定申告額が現実の所得額と必ずしも一致するものではないにしても、前記原告本人の供述するところは右所得申告額と相隔ること甚しく、しかもその内容は前記のように漠然たるものであり、これを裏付けるに足りる何等の証拠も存しないのであるから、到底損害算定の基礎とするに足りない。 また原告は、昭和三六年度と昭和三七年度との申告所得額から営業の成長率を割り出し、本件事故がなかつたとすればその割合によつて昭和三八年度においても収益を増加した筈であるからその額と現実の申告所得額との差額が年間の喪失利益であるとし、その生涯に亘る全額をもつて全喪失利益であると主張する。しかしながら、前年度の営業の成長率が当然に当年度の成長率と同じであるとする証拠はなく、右主張も採用するに由ない。 さらに原告は、本件事故のため臨時に雇入れた店員二名をその後もなお営業を継続するために雇傭しているから、その中少くとも一名に対する出費は、本件事故により生じた営業上の損失であると主張するが、原告の本人尋問の結果によれば、原告の退院後一ヶ月で右臨時店員等の雇入れを止め、従前の人員で営業を継続していることを認め得るのであるから、原告のこの主張も排斥せざるを得ない。 よつて右(一)乃至(七)の物的損害合計は、金三九九、九七〇円(すでに被告の支払つた分を除く)となるところ、本件事故に関する前記認定事実に徴すると、原告もまた徐行乃至一時停止をして安全を確認した上進行すべきであるのにこれを怠つた過失があるものというべく、当事者間に争いのない被告会社において入院治療費及び入院手続費用合計金一一八、二八三円の支払をなした事実とあわせて考慮すると、原告の右損害の中被告等の負担すべき額は、(一)乃至(三)、(六)の損害及び(五)の内金三〇、〇〇〇円の合計金一八三、三〇四円の内金一二〇、〇〇〇円、(五)の損害につき金一四〇、〇〇〇円の合計金二六〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。 |