全 情 報

ID番号 05463
事件名 地位保全金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 北海丸善運輸事件
争点
事案概要  一年の期間の定めのある契約を五回にわたって更新してきたトラック運転手に対する雇止めにつき、解雇法理の適用があり、雇止め理由が組合活動を嫌悪したものとして、権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1990年8月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 3756 
裁判結果 申請一部認容,一部却下
出典 労働判例570号56頁/労働経済判例速報1414号6頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 被申請人が申請人との雇用契約の更新拒絶をした当時、確かに被申請人のいう違法を疑われる状態はあったが、被申請人のA常務、B部長もいうとおり、そのような状態で営業をしなければならない事情が、被申請人が申請人を雇用するより前から現在まで程度の差はあっても変わることなく続いており、実際に、右更新拒絶後においても、被申請人においては、大阪事務所を神戸市に移転したという事情はあるものの、そこで従来とそう変わりのない営業を続けており、その営業のために北海道の被申請人の本店からいわゆる正規の従業員(運転手)を派遣し、この従業員を北海道に帰任させてもさらに交替の従業員を派遣する予定である。要するに、現実の問題として、申請人との契約の更新を拒絶したからといって被申請人のいう違法状態の解消に特につながるというものではなく、かつ被申請人が大阪周辺で従来と同じような営業を続けるために被申請人の雇用した従業員を必要とする状態は何も変わっていないのである。もちろん、被申請人のいうような違法状態が解消されるべきであることはいうまでもないが、その解消のために、申請人のような現地採用されたということを除けばいわゆる正規の従業員と差がないといってよい従業員との契約関係を解消すること以外に方法がなかったことをうかがわせるような資料もなく、また被申請人が違法状態解消のために従業員の解雇ないし類似の措置以外の方法があるかどうかを検討し、それを避けるための努力をした形跡も特にない。申請人はきわめてよく働く従業員であって、その勤務成績の点において雇用関係の解消を考えなければならないといった事情がまったくなかったことは、前記のとおりである。このような事情と、被申請人が申請人に対して雇用契約の更新拒絶を告知したのが、被申請人に申請人の労働組合(前記支部)加入を通知し、申請人が現実に積極的に組合活動に参加するようになった時期と一致しており、このころに前記の被申請人のいう違法状態の態様に特に変化が生じたこともなく、そして右更新拒絶がきわめて唐突であったことなどをあわせ考えると、被申請人が申請人に対してした更新拒絶すなわち実質的に解雇の意思表示は、申請人の労働組合加入および組合活動への積極的な参加を被申請人が嫌悪した点に主要な動機があるということができ、その意思表示は、合理性を欠き、長く安定した勤務を継続したいとの申請人の期待を裏切る信義則違反で権利(解雇権)濫用の行為であって無効というべきである。