全 情 報

ID番号 05467
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 エイト交通事件
争点
事案概要  無断欠勤、業務命令違反、同僚への暴行等を理由とする懲戒解雇につき、懲戒理由がいずれも存在しないとして無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 無届欠勤・長期欠勤・事情を明らかにしない欠勤
解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1990年9月10日
裁判所名 札幌地
裁判形式 決定
事件番号 平成2年 (ヨ) 315 
裁判結果 申請認容
出典 労働判例572号102頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-無届欠勤〕
〔解雇-解雇事由-暴力・暴行〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 (一) 無断欠勤
 就業規則の定め及び債務者における当時の年次有給休暇取扱手続からして、当時は、債務者の従業員が専務の机の上に年次有給休暇願を提出すれば、債務者が時季変更権を行使しない限りその請求した日時が休暇となるものと解すべきである。
 そうすると、本件においては、債務者は時季変更権を行使していないのであるから、債権者が年次有給休暇願を専務の机上に提出した時点において、その時点以降が債権者の休暇となったものというべきである。したがって、無断欠勤の点については懲戒事由は存しないというべきである。
 (二) 業務命令違反 一の8記載の書面の文言自体が任意の出頭を促すものか業務命令なのかはっきりしないこと、右書面に出頭の目的が何ら記載されていなかったこと、AやBも債権者にその目的を明らかにしていないこと、出頭すべき場所も債務者の事務所でもないこと、出頭すべき日が債権者の休日であったこと、及び当時債権者らの属する組合と債務者とが労働委員会において係争中であったことの各事情を考慮すれば、債務者の主張するような前記Cへ出頭すべき業務命令自体が存在しなかったというべきである。したがって、右業務命令違反という懲戒事由は存在しないものというべきである。
 (三) 傷害 債権者が、Dの右腕を両手で掴み引いた事実については、その程度及び動機に照らし、これを債権者のDに対する不法な有形力の行使ということはできないし、債権者の行為によりDの右肩関節部挫傷の傷害が発生したと一応認めるに足りる証拠もないから、債権者がDに傷害を負わせたという懲戒事由は存在しないものというべきである。
 (四) そうすると、債務者の主張する懲戒事由は、いずれも存在しないから、これらを理由になされた本件解雇は無効のものである。