ID番号 | : | 05481 |
事件名 | : | 雇用関係確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄清算事業団事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「成田空港反対闘争」において現行犯逮捕されたことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 逮捕・拘留 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1990年10月12日 |
裁判所名 | : | 新潟地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 89 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例573号26頁 |
審級関係 | : | 控訴審/東京高/平 3. 4.16/平成2年(ネ)3761号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-逮捕・拘留〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 1 国鉄のように公共性を有する公法上の法人であった企業体にあっては、その事業の運営内容のみならず運営のあり方も社会的批判の対象とされ、その事業の円滑な運営の確保と並んで廉潔性の保持が要請ないし期待されているというべきであるから、国鉄職員の職場外における職務遂行に関係のない行為に対しても一般私企業と比較してより厳しい規制がされうる合理的理由があるものと解するのが相当である。 2 国鉄法三一条一項は、同項一号、二号に掲げる事由に該当した場合に懲戒処分をしうる旨を定め、同一号は懲戒事由として「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」を掲げ、また、右業務上の規程である就業規則一○一条に懲戒される行為の定めがあり、同条一七号の「その他著しく不都合な行為があった場合」との規程は同条一六号の「職員としての品位を傷つけ又は信用を失うべき非行のあった場合」との規程と対比すると、単に職場内又は職務遂行に関係のある行為のみを対象としているのではなく、国鉄の社会的評価を低下、毀損するおそれがある職場外の職務遂行に関係のない行為で著しく不都合と評価されうるものをも包含すると解することができる。そして、右各規程が具体的な業務阻害等の結果の発生を要件とするものではないことは、その文言に照らして明らかである。 3 そうすると、前記認定にかかる原告の本件行為は、その内容、態様からして、国鉄の社会的評価を低下、毀損するおそれがあり、著しく不都合な行為に該当するというべきであるから、これが職場外で行われた職務遂行に関係ないものであっても、懲戒処分の対象となることは明らかである。 三 本件処分の相当性 1 原告の本件行為は、前記一記載のとおり、凶器準備集合罪、公務執行妨害罪に該当する犯罪行為であり、その態様も武装した過激派集団と行動を共にした反社会性の高い過激な行動で、付近住民に与えた不安はもとより社会に及ぼした影響も極めて大きい。 2 国鉄法三一条一項は、国鉄職員が懲戒事由に該当した場合、懲戒権者(国鉄総裁ないしその代行者)は懲戒処分として免職、停職、減給、戒告の処分をすることができる旨規定しているが、どの処分を選択すべきかについてはその具体的基準を定めた法律や就業規則の定めはないので、懲戒権者の裁量に任されているものと認められる。したがって、その裁量が社会観念に照らして合理性を欠くものではない限り違法とはならない。 3 原告は、本件処分は国鉄における過去の同種事案に比して過酷であると主張するが、原告の主張する処分例はいずれも本件とは性質や事案を異にするので、比較対照するのは適切ではないうえ、〔中略〕 本件事件に参加して現行犯逮捕された他の国鉄職員の職員三名がいずれも免職処分を受けていることが認められるので、右主張は理由がない。 4 そうすると、国鉄が原告に対し、本件行為につき本件処分を選択した判断が恣意にわたり或いは合理性を欠くとはいえないから、本件処分が裁量の範囲を越え処分権を濫用した違法なものということはできない。 四 以上によれば、本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 |