ID番号 | : | 05482 |
事件名 | : | 営業妨害禁止等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 眞壁組事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 運送委託契約を締結しているミキサー車運転手との間には雇用契約は存在していないとして、運転手らによる業務妨害を元請会社は差し止める権利を有するとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法632条 労働組合法7条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約 労働契約(民事) / 成立 |
裁判年月日 | : | 1990年10月15日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成2年 (ヨ) 1497 |
裁判結果 | : | 申請一部認容,一部却下 |
出典 | : | 労経速報1412号6頁/労働判例573号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕 〔労働契約-成立〕 そこで、まず、申請人が被申請人に加入する本件分会員の使用者としての地位に立ち、被申請人の団体交渉要求に応ずべき義務があるか否かについて検討する。 〔中略〕 本件分会員は、いずれもB会社との間で少なくとも形式上は一種の請負契約とみられる運送委託契約を締結しているものであり、前記一応認められる事実の中にはこれが実質上も一種の請負契約であることを裏付ける事実もかなりあるといわなければならない。しかし、本件分会員らは、A会社内に事務所を置くB会社の配車係が指定した時刻に、毎日早朝集められ(被申請人A会社分会が結成されるまでは、A会社のその他の従業員と同様タイムカードも打刻していた)、当日の出荷がなくなると配車係から告げられるまで、原則としてA会社の構内に順番待ちのための待機を事実上余儀なくされ、しかも、本件分会員らは、いずれも「B会社」のネームの入った制服を着用させられた上、自らの所有するミキサー車に「A会社」の文字が書き入れられ、更に、運送業務を行うに際し、Cらから、取引先に挨拶をせよなどといった業務上の指示を受けることがあったというのである。このような諸事情をも考慮すると、本件分会員とB会社との前記運送委託契約に基づく法律関係は、実質上には労働契約関係とみるべき余地があることを否定できない。 そして、本件分会員とA会社との間においては、私法上、雇用契約その他何らの契約関係にもないことが明らかであるが、審尋の全趣旨によると、生コン製造事業は、生コンという製品の性質上、迅速かつ確実な輸送体制を併せ持つことがその成立の上で不可欠な条件であることが一応認められるところ、A会社は設立当初から生コン輸送のための物的及び人的設備を保有せず、Cに依頼してA会社の製造する生コンの運送を担当することを主たる目的とするB会社を設立されたものであって、しかも、B会社は、その実質的な事務所をA会社事務所内に置き、B会社の配車係は、専らA会社の担当部長の作成する出荷表に基づき配車をするのみであったという事情にかんがみると、別会社とはいえ、B会社は、実質的にはA会社の会社内における一輸送部門との評価ができない訳ではなく、したがって、A会社と本件分会員との間においても、実質的には労働契約関係が成立しているとみうる余地が全くないとはいえない。 しかしながら、申請人と本件分会員との関係についてみると、申請人は、A会社を「子会社」と宣伝するなど、同社とはかなり密接な業務提携関係があり、申請人の発注先として重要な地位を占めるものではあるが、本件分会員との間に私法上雇用契約を締結しているわけでないことはもちろん、A会社の従業員の労働条件その他同社の経営を支配し得る資本的、人的関係が存在しないことは前記認定のとおりであって、他に申請人が雇用契約上の使用者に準じて、本件分会員の労働条件に対し直接かつ具体的に影響を及ぼしうるような地位にあると一応認めるに足りる疎明資料もない。したがって、A会社は、基本的には申請人が商社等の注文に応じて発注する生コンの購入先の一つにすぎないものというほかなく、仮に本件分会員とA会社との間に実質上の労働契約関係が肯認できる余地があるとしても、申請人と本件分会員との間においては、実質的な労働契約関係を認めることはできない。 したがって、申請人を本件分会員の使用者としての地位にある者であるとの前提の下に団体交渉を要求し、これが拒否されたことなどを理由に申請人に対し争議行為に及んだ被申請人の行為は、既にその目的において正当なものとの評価を受ける余地がないものといわなければならない。したがって、申請人は、営業権に基づき、被申請人が組合員又は第三者をして行わせる営業妨害行為を差し止める権利を有するというべきであり、また、前記認定の諸事情を考慮すると、その保全の必要性も高いというべきである。 |