ID番号 | : | 05486 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 共信事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被告会社に社員として在籍したまま子会社の業務担当者を命ぜられていた者に対する、職務怠慢、無断欠勤等を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向中の労働関係 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 1990年10月22日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 7128 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例572号42頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 〔配転・出向・転籍・派遣-出向中の労働関係〕 1 まず、(一)について、原告は、当該ダンボール・パッケージの価格は従前の購入先からの仕入れ価格より安価であったから、被告ないし株式会社Aに実損は生じていない旨主張するが、たとえ右購入価格が従前のそれより安価であったとしても、現実に購入していたダンボール・パッケージの価格より高額の金員を支払わせた以上、損害がないとはいえない。 (二)について原告は、出荷された商品は、Bが、独自に調達した原材料を用いて製造したものもあり、また、株式会社Aの原材料を消費した場合にはその補充をしているから、出荷に際して要した運賃を株式会社Aに負担させたほかには同社に実損は生じていない旨主張するが、Bが出荷した製品中には、問題の販売、出荷を目的として、別途購入した原材料を用いて株式会社A向けの物と区別して製造した製品はなく、販売、出荷された製品は、すべて予め株式会社Aのために製造されていた在庫品であることは前記認定のとおりである。そして、当該製品の製造に際して用いられた機械、原材料の所有者は株式会社Aであり、電力料金等製造経費の負担者も同社であって、Bは単なる賃加工をしていたにすぎないのであるから、製造された製品の所有者も株式会社Aであるとみるべきであり、Bによる他への販売、出荷は、株式会社Aのために保管中の同社所有物をほしいままに流用したもので、右不正行為による被害は販売、出荷された製品全部であるといわなければならない。Bが、出荷後不足の穴埋めのために原材料の補填をしたものは樹脂に限られるし、補填がなされたといえるものについても、機械の使用、機械の推持費、機械運転のための電力費、製品の梱包のためのダンボール・パッケージ、出荷に際して要した運賃等はすべて株式会社Aの負担のままであるから同社に生じた実損が少ないとは到底いえない。のみならず、〔中略〕 Bの販売、出荷先は、被告及び株式会社Aと競争関係にある者らであって、これらの者が被告の取引先に競合的に販売したことが窺われるのであるから、その点をも考慮に入れれば、被告及び株式会社Aが被った実質的な損害は更に大きなものであったことを推認することができる。 そして、原告は、株式会社Aについての不詳事が直ちに被告の就業規則の関係規定に該当するとはいえない旨主張するが、株式会社Aと被告との関係は、株式会社Aが被告の営業の一部門ともいうべき関係であったこと、法形式上、両者は別人格ではあるものの、右のような関係を前提として、原告は被告に社員として在籍したまま株式会社Aの業務担当者を命ぜられ(辞令上の表示も「大阪支店A業務部次長」である。)、その業務を担当していたことに照らすと、原告の2(一)(1)、(2)、(二)の行為は、被告就業規則五五条(11)はもとより、同条(13)にも該当するものと認められる。 原告の(三)の行為は、右のような被告と株式会社Aの関係に照らすと被告就業規則五五条(13)に該当する。 (四)についての原告の弁明供述はそのまま措信することはできないが、本件全証拠によっても、被告主張の金額を原告が流用したことを確定的に認めることはできない。 (五)について、原告は、株式会社Aの代表取締役Cの解任等の出来事から原告が精神的混乱を来していたかのように主張し、会計帳簿類の作成の遅延は、原因がそこにあるので業務上の重大な失態とはいえない旨主張するようであるが、Cの株式会社Aからの離脱に与していないと主張する原告が、既に前年から株式会社Aに出社していなかったCの解任によっていかなる混乱を生じたというのか不明であるのみならず、原告によれば、Cの解任を知ったのは昭和六○年六月半ばのことであるというのであるから、同年四月以降を中心とする、右以前からの経理処理の疎漏の原因がCの解任という出来事にあると考える余地はない。そして、当時の株式会社Aの業務内容に照らすと、株式会社Aの経理事務処理は最も中心的な原告の職務内容であったというべきであるから、その点に前記認定のような問題のあったことは、株式会社Aの代表者の解任に至る経営者側内部での確執があったとしても、職務上の重大な失態とされることを免れることはできない。したがって、原告の右行為は被告就業規則五五条(1)に該当する。 (六)について、原告は、Dからの指示に従って欠勤したかのようにも主張するが、前示のように長期にわたる無断欠勤がDの指示によるものであることを認めるに足りる証拠は何もなく、原告の右行為は、被告就業規則五五条(3)に該当する。 2 また、原告は、本件解雇が解雇権の濫用として無効であると主張するが、原告の行為の重大性に鑑みれば、本件解雇をもって使用者たる被告の裁量の範囲を逸脱又は濫用した不相当のものと目すべき事情を認めるに足りる証拠は何もない。 |