ID番号 | : | 05492 |
事件名 | : | 生コンクリート搬出搬入妨害禁止仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 全日建運輸関西地区生コン支部事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 生コンの運送にあたるコンクリート・ミキサー車運転手が生コン販売会社の団交拒否に対し抗議行動を繰り返し右販売会社の営業を妨害したとして営業妨害禁止の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法10条 労働組合法7条2号 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 使用者の概念 |
裁判年月日 | : | 1990年11月6日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成2年 (ヨ) 1138 |
裁判結果 | : | 申請認容 |
出典 | : | 労働判例573号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-使用者-使用者の概念〕 1 申請人は、肩書地に本社を、泉大津市(略)に泉大津工場を置き、生コンクリート(以下「生コン」という。)の製造・販売等を業とする株式会社である。申請人は、独自の運送設備を有しておらず、申請人が製造した生コンは、申請外株式会社A(以下「A」という。)が運送している。 2 被申請人は、関西地区におけるセメント・生コン産業及び運輸産業、建設一般産業等で働く労働者によって組織された労働組合である。 前記Aは、コンクリートミキサー車を保有する個人商店主たちと個別に契約を締結し、申請人の製造した生コンを運送させていたところ、平成元年六月ころ、右商店主のうちの一一人が被申請人に加入した。 3 被申請人は、Aと各商店主の関係は実質的には使用者と労働者の関係であり、さらにAは申請人が労働法上の責任を回避するために別法人とした申請人の一運送部門にすぎず、申請人と各商店主との関係も実質的には使用者と労働者の関係であると主張して、平成元年六月一二日、申請人に対し、労働組合加入通知及び団体交渉の申し入れをなした。 しかし、申請人は各商店主に対し使用者としての責任を負うべきいわれは全くないとして団体交渉要求に応じず事態は紛糾した。 そこで、生コンの注文を取って申請人に発注したり、申請人に生コンの原材料である砂利・砂を納入する等の立場にある申請外株式会社B(以下「B」という。)の代表取締役申請外Cと被申請人の執行委員長Dが、事態の根本的解決を目指した非公式の和解交渉を開始したが、これも平成二年三月ころ決裂した。 4 被申請人は、右の和解交渉決裂の経過には組合潰しを狙うCの背信行為があったと主張し、平成二年四月一一日午前七時二○分ころから同日午後三時ころまで、宣伝車一台及び大型バス一台で約一五○人の組合員を動員して申請人泉大津工場に乗り込んで抗議行動を行った。それ以降も被申請人による右工場における同様の行為が継続しており、申請人は、被申請人の右一連の行為は、自己の業務である生コンの搬出及び材料の搬入を実力により妨害するものであるとして、営業権に基づき右行為の禁止を求めて本件仮処分申請に及んだ。 二 主要な争点 1 申請人の業務の内容(生コンの搬出が、申請人の「業務」に含まれるか。) 2 被申請人の行為の正当性の有無 第三 争点に対する判断 一 争点1(申請人の業務の内容) 1 Aと創業当初から契約している個人商店主が当時のE社長から渡された契約書案(〈証拠略〉)には、申請人が期限までに生コン等を製造してAに販売し、Aが申請人の工場に引き取りに行ってこれをBに対し販売するという継続的基本契約を三社間で締結することとなっている。この案によれば生コンの搬出は、申請人の業務に含まれないことになる。 しかし、右の契約書案は、A側が反対したことから正式の契約締結には至っておらず、申請人は結局BともAとも、右契約書案にかわる正式の基本契約書を交わさないまま営業を開始し現在まで継続してきている。 2 〔中略〕現実の三社の関係は次のとおりである。 生コンの注文を取ってきたBは、申請人に対し、生コンを製造し指定工事現場へ納期にあわせて納入することを注文する。Aは単に申請人から生コンの運送業務のみを委託されているものであり、納入先の各工事現場では申請人の担当社員が待機し、到着した生コンの品質を検査し、工事現場責任者に指示どおりの商品であることの確認を受け、納品伝票に荷受のサインを受ける。申請人の業務はこれによりはじめて完了し、Bから代金の支払いを受けられることとなる。右代金には生コンの運送代金も含まれ、申請人からBへ請求されるが、支払い時期との関係で、Aの取り分については、申請人の了解のもと、BからAに直接支払われている。 3 〔中略〕申請人は単に生コンを製造するのみならず、これを工場から搬出して指定工場現場に納入することまでを業務としており、このうちの運送業務につきAに委託しているという法律関係にある。よって、生コンの材料の搬入が申請人の製造業務の一環であることはもちろん、製造した生コンの工場からの搬出もAないし各個人商店主の業務であると同時に、これを委託した申請人の納入業務の一環であることは自明の理である。 〔中略〕仮に申請人が被申請人主張のとおり被申請人に加入している一一人の商店主の実質的な使用者として団体交渉に応じるべき立場にあるとしても、被申請人の右一連の抗議行動の態度は、ピケを張って車の前にたちはだかる暴力事件にいたるなど労働組合の正当な活動として許される平和的説得ないしこれと同視しうる程度の方法による活動の範囲を超えた実力行使であるから違法なものである。 |