ID番号 | : | 05507 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 岡山電気軌道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 就業規則上、在籍専従期間は「休職」とし、退職金の算定にあたっては右在籍専従期間は「勤続年数」に算入しない旨定めていたのに対して、協約は右期間を「勤続年数」に算入すると定めていたが、その協約が失効したとの理由で、会社が在籍専従期間を「勤続年数」に算入しないで退職金を支払ったのに対して、右期間を算入して退職金を支払えとして訴えた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法3章 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 1991年1月29日 |
裁判所名 | : | 岡山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 301 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労働速報1418号3頁/労働判例581号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山川隆一・ジュリスト1018号131~133頁1993年3月1日/小俣勝治・季刊労働法160号207~208頁1991年8月 |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 従業員としての身分を保有しながら労働組合の業務に専念するいわゆる在籍専従者の地位に関して、就業規則第三五条は、専従期間中は休職とすることとし、また、退職金算定の基礎となる勤続年数に関し、退職金支給規程第九条は、勤続年数に休職期間は算入しないものとし、同様に、就業規則第三五条は、勤続年数に休職期間は含めないとしている。このように、被告の就業規則及び退職金支給規程は、退職金の算定の基礎となる勤続年数から休職期間を控除するについては、休職の理由によって区分することなく一律に取り扱うことにしているものである。退職金が賃金の後払いという側面をも有していることを考えれば、従業員が在籍専従中はそもそも労務の提供をせず、賃金が支払われることもないのであるから、一般的には、退職金の算定にあたっても、休職期間を勤続年数から控除することはあながち不合理なものとはいえない。 しかしながら、他方、労働協約は、在籍専従者の待遇に関して、賃金を支払うことはないものの、専従期間中の昇給、昇格、福利厚生施設の利用及び専従終了後の復職などについて一般従業員と同様に取り扱うことを定めるとともに、同第三三条において、在籍専従による休職期間は勤続年数に加算するとしている。そして、退職金の支給に関して、同第一三条が、会社は従業員に対して「勤続年数」に応じて退職金を支払うとしていることからすれば、労働協約第三三条は、退職金の算定に関して、在籍専従による休職期間を勤続年数に含める趣旨を規定したものであると解される。このような取り扱いは、実質的にみれば、使用者が在籍専従者の賃金を一部負担するかのような結果になることは否定できないが、そうだからといって、労働協約においてこのような定めをすることが許されないものではない。 右に述べたとおり、本件争点に関し、就業規則及び退職金支給規程と労働協約は、相反する内容を規定しているが、在籍専従者の退職金に関する基準も、労働組合法一六条にいう労働条件その他労働者の待遇に関する基準に含まれるものと解されるから、労働組合法一六条及び労働基準法九二条一項により、労働協約の規定が就業規則及び退職金支給規程に優先することになるものである。 また、実際にも、被告は、原告以外の従前の在籍専従者の退職金に関しては、在籍専従の休職期間も勤続年数に算入したうえで退職金を計算して支給していたことが認められ(証人楢村普典、原告)、このことからすれば、労働協約第三一条は、退職金算定の基礎となる勤続年数に在籍専従による休職期間を算入することを規定したものであるとの解釈及び取扱いが、既に労使慣行としても定着していたものと認められる。 |