ID番号 | : | 05513 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪海運事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | コンピユーターの導入により業務量の減つた第二営業部から第三営業部への配転命令を拒否して解雇された者が、地位保全の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法89条1項9号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1991年2月4日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成2年 (ヨ) 2135 |
裁判結果 | : | 申請却下 |
出典 | : | 労経速報1420号11頁/労働判例585号124頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇権の濫用〕 被申請人の申請人に対する配転命令は有効なものであって、申請人は配転命令にしたがって第三営業部で就労する義務を負うといわなければならない。しかし、申請人は、前記のとおり、配転命令の効力は訴訟で争うが第三営業部での就労自体は拒否しないことを明言し、譴責処分をうけたさいにも同様の態度を明らかにしながら、二回にわたって就労を拒否したものであり、二回目の就労拒否だけみても、被申請人の就労指示の命令にまったく応じないで、被申請人が解雇を通告するまで七日以上にわたって就労拒否を継続したものである。このような申請人の就労拒否の行為は、前記一6掲記の就業規則五八条二、三号所定の懲戒解雇事由(同規則四九条六号により即時解雇事由ともなる)に該当し、また同規則四九条二号所定の即時解雇事由である無断欠勤七日以上に相当する場合に当たるといえる。これらをあわせて、即時解雇の要件は満たされているといえる。 申請人は、被申請人は申請人の前記三【1】、【2】、【3】の主張のとおりの(配転命令におけるのと同様の)不当な動機、目的のもとに申請人を解雇したものであるから、その解雇は権利濫用で無効である旨主張する。しかし、右の申請人の主張にそう事実が認められないことは右三1、2、3でみたとおりであり、なお疎明を総合しても、被申請人が申請人のいうような不当な動機、目的で申請人を解雇したとの事実を認めることはできない。 さらに、疎明によると、被申請人は、平成二年六月一日から、第三営業部における申請人の担当をそれまでの三号クレーンから二号クレーンに変更し、申請人はそれ以後同クレーンの前にある荷受小屋を拠点として勤務することになったことが認められるが、申請人は、この荷受小屋は冷暖房設備もなく、執務環境が極めて劣悪であり、被申請人が申請人を他から差別し、冷遇してこのような場所に閉じ込めておいて、この差別的取扱いに耐えかねた申請人を解雇したのは、権利濫用である旨主張する。しかし、被申請人は、申請人が第三営業部での作業にも慣れてきたため、それまで現場事務所の間近にあって上司の指導上も便利であった三号クレーンの担当から、同クレーンから各数十メートル離れた場所にある二号および五号クレーンのうち二号クレーンの担当に変更したものであること、三機のクレーンの前にはそれぞれ荷受小屋があるが、その設備は同じようなものであり、いずれも冷暖房設備はないが、これは、各担当者とも小屋外で作業するのが常態であって、従来各小屋内にそのような設備を設置する必要にそれほど迫られていたわけではないこと、また各クレーンの担当者は休憩等の場合には現場事務所を利用することができ、申請人についても現場事務所の利用が妨げられたことはないことが認められる。これによれば、荷受小屋の設備を改善するのが望ましいとしても、それはすべての荷受小屋についていえることであって、被申請人が申請人を二号クレーン担当としたこと自体は、申請人のいうような差別的取扱いに当たるものではないということができ、差別的取扱いがされたことを前提とする申請人の権利濫用の主張は理由がない。 その他、疎明を総合しても、被申請人の申請人に対する解雇を権利濫用であると認めることはできない。 |