ID番号 | : | 05523 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求控訴事件/同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄長崎駅事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 同僚に対する懲戒処分発令および職場点検作業に従事中の助役に対して暴言を浴びせ、右職務の遂行を妨害したとしてなされた国労組合員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 日本国有鉄道法31条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1991年3月14日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ネ) 641 平成1年 (ネ) 815 |
裁判結果 | : | 控訴一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 労働判例587号48頁 |
審級関係 | : | 一審/05292/長崎地/平 1. 9.14/昭和62年(ワ)5号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 職場にいかなる私物を持ち込むかは、本来各人が、当該職種との関係で判断できる性質のものである。仮に、職場に持ち込める私物の判断に労使の間に意見の相違がでてきたときは、労使で先ず協議をするべきであって、これをしないで、一方の見解を強要するが如きは、近代的な労使関係を築くことに背くものというべきである。そして、勤務時間中に組合活動をしている等の特段の事情がないのに、管理職が、職場から組合機関紙の撤去を強行する権利があるかどうか疑問であることに思いを致すとき、A助役の前記言動は、要職にある管理者の行動としては穏当を欠くものということができる。」と改める 25 〔中略〕 次のとおり認められ、これに反する右掲記中の証拠部分は採用しない。」と改める。 26 五一枚目表五行目の「右詰所横の食堂」(36頁4段5行目)を「右詰所横にある第二運転室食堂(食堂とは通称であり、一般職員が食事をとるときのみならず、休憩、待機、手待時間のときにも利用する場所である。)」と、七行目の「雑然と置いてあった」(36頁4段9行目)を「置いてあったが、同助役らの目には、雑然と置いてあるように映った」と改める。 27 同枚目裏六行目の「「」(36頁4段13行目の「「」から五二枚目表五行目末尾(37頁1段18行目)までを「私物を勝手に開けようとするB首席助役に、大声で『泥棒みたいな真似をするな、いいかげんにしてくれ。』という趣旨の言葉を使って激しく抗議し、詰め寄り、『泥棒とは何だ。』という趣旨の言葉で被控訴人をたしなめる同助役らとの間で数分間にわたって緊迫したやりとりがあった。と改める。 〔中略〕 職場にどのような私物を持ち込み、置くのが相当かということは、他人に迷惑を及ぼし、ひいては他人の職務専念義務をも損ないかねないとか、企業秩序を乱すおそれがある等の特段の事情がない限り、職場環境を快適に維持するために本来各人が良識をもって自主的、自発的態度を持って判断し、行動すべき事柄であって、職場規律の確立という組織の根幹に触れる問題として職場の上司と部下職員、業務命令という関係を前面に押し出しての問題解決になじむものであるかどうかは疑問であると解されるところ、本件全証拠によるも右特段の事情を認めるに足りないこと、憲法が思想、表現の自由を保証している趣旨からして、国労組合員らが職場に置いている『国労』『団結』『分割民営化反対』等と書いた私物の弁当箱等の排除を求めうるかどうか、また、単に組合機関紙を職場に置いているにすぎないのに(勤務時間中に組合活動をしているものとまではいえない。)右特段の事情なくして助役にその撤去を強行する権利があるかどうかはいずれも疑問であり、さらに、原則として所持品検査はできないのに、あたかもこれができるかのように私物の紙袋を手元に引き寄せて覗き込み、私物を検査しようとした六月三日のB首席助役の態度は、節度を超え、管理職として軽率である。 |