ID番号 | : | 05527 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | コスモ油化事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社の前社長の長男であった労働者が、上司または会社の指示に従わず、改善の意思を見せなかったとして解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 |
裁判年月日 | : | 1991年3月26日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (ワ) 4806 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1431号25頁/労働判例590号59頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒解雇の普通解雇への転換・関係〕 従業員に就業規則所定の懲戒解雇事由に該当する所為があった場合においては、使用者は、右所為が同規則所定の普通解雇事由に該当しない場合であっても労基法上の制限の範囲内で当該従業員を普通解雇することができるものと解するのが相当である。そこで、原告の所為が懲戒解雇事由に該当するか否かにつき判断する。 〔解雇-解雇事由-就業規則所定の解雇事由の意義〕 被告代表者本人尋問の結果によれば、就業規則を作成した被告会社の代表者であるAは、普通解雇事由は第四八条各号に限定する趣旨でこれを作成したことが認められることからすると、一般論としてはともかく、被告会社の就業規則第四八条は普通解雇事由を同条各号に限定する趣旨の規定であると解するのが相当である。 したがって、前判示のとおり原告の本件所為が第四八条三号に該当しない以上本件解雇が有効となる余地はないものというべきである。 (二) なお附言するに、仮に、就業規則第四八条を被告が主張するように例示列挙と解することができたとしても、当裁判所は、本件解雇が有効であるとは考えない。以下、その理由を述べる。 確かに、原告の本件所為には、通常の従業員としての注意力を欠いているもの(1の(1)、(2)及び(5))、職務に精励しているとは言い難いもの(1の(3)及び(4))、従業員としての立場をわきまえていないと非難されても仕方がないもの(1の(6)及び(7))、があり、原告が被告会社にとって「期待される従業員」でないことはこれを認めてよい。 しかし、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になるものと解すべきである。 これを本件について見るに、原告の本件所為は、個々的には些細なでき事と見る余地もあり、現にこれらによって被告会社が具体的にどのような迷惑、被害を蒙ったのかを認めるに足りる証拠はないこと、被告会社が本件解雇までの間に右所為に対し就業規則に定める懲戒処分を行っていないことは前記認定のとおりであるのみならず、原告を叱責しあるいは教育すべくどのような具体的手段を講じていたのかを明確にする証拠もないこと、原告、被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告と被告代表者Aとは義理の兄弟であり、両者間には原告の父親の遺産を巡って紛争が生じており、このことと本件解雇とが全く無関係とは言い切れないことが認められること等の事情を併せ考えると、原告の本件所為に対し解雇をもってのぞむことはやや苛酷にすぎるというべきであり、本件解雇を社会通念上相当なものとして是認することは困難である。 したがって、被告会社の就業規則第四八条を例示列挙と解したとしても、本件解雇は解雇権濫用として無効といわざるを得ない。 |