全 情 報

ID番号 05534
事件名 給与等請求事件
いわゆる事件名 とみた建設事件
争点
事案概要  解雇された労働者が、通勤手当、時間外手当、解雇予告手当等を請求した事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
労働時間(民事) / 労働時間の概念
裁判年月日 1991年4月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 1470 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例589号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定方法〕
 原告は、時間外労働時間数を別紙時間外労働一覧表(略)の【1】ないし【3】のとおり主張する。
 右のうち、【3】の分は
 〔中略〕
 によれば、昭和六三年三月三〇日から同年四月一日までの分(前記研修期間中にあたる。)を除き、原告のタイムカードの退社の打刻時間をもとに算出したことが認められる。そして、被告において、タイムカードにより従業員の時間監理をしている以上、それを基準に、時間外労働時間数を算定することは相当である。
 原告は、右研修中は主催者の指定する施設に宿泊を義務づけされ、昭和六三年三月三〇日の午後五時三〇分から同年四月一日の午前八時まで研修のため拘束されるので、そのうち三月三一日の午前八時から午後五時三〇分までの所定労働時間を除いたその余の時間は時間外労働時間とみるべきであるとの前提のもとに右期間中の時間外労働時間数を主張するが、原告の主張する右時間帯に、原告が従事すべき労働はなく、その業務から解放されているものであるから、それらは労働時間ではないと解すべきで、原告の右主張は失当である。したがって、右【3】の四月支給分の時間外労働時間数は三六時間五六分となる。
 原告は、同表【1】【2】の時間外労働時間数を立証する証拠として
 〔中略〕
 を提出している。そして、原告は、(証拠略)は工事日報及びタイムカードに基づいて作成したと供述する。しかし、タイムカードの存する右【3】の分と
 〔中略〕
 の対応部分を比較すると、
 〔中略〕
 の時間外労働時間数がタイムカードのそれより少なめに計上したものが二日分(その開きは一分と五三分)、多めに計上したものが一四日分(その開きは一分から二二時間四六分)、一致するものが一日分であることが認められるので、
 〔中略〕
 の時間外労働時間数に関する記載の信用性については疑問を抱かざるを得ず、直ちにこれを採用することはできない。しかし、原告の労働実態は右2(二)のとおりで残業が恒常化しており、タイムカードの存する期間中の、最低の時間外労働時間数である五〇分をもって右【1】【2】の各日における時間外労働時間数としても、その実労働時間の範囲内にあると推認されるので、一日当たり五〇分をもって原告の時間外労働時間数とする。そうすると、右【1】の二月支給分は七時間三〇分、右【2】の三月支給分は休日出勤分を含めて三七時間四〇分となる。
〔労働時間-労働時間の概念〕
 なお、時間外労働といえども、使用者の指示に基づかない場合には割増賃金の対象とならないと解すべきであるが、原告の業務が所定労働時間内に終了し得ず、残業が恒常的となっていたと認められる本件のような場合には、残業について被告の具体的な指示がなくても、黙示の指示があったと解すべきである。