ID番号 | : | 05537 |
事件名 | : | 地位保全金員支払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 大池市場協同組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 小規模で従業員も小人数の市場協同組合で店長として勤務していた労働者が、年休の時季指定をしたのに対して、使用者が時季変更権を行使したにもかかわらず欠務したことを理由として解雇され、地位保全の仮処分を申請した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1991年5月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成3年 (ヨ) 903 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部却下 |
出典 | : | 労経速報1433号3頁/労働判例593号58頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 新谷真人・労働法律旬報1292号27頁1992年7月25日 |
判決理由 | : | 〔年休-時季変更権〕 使用者が従業員からの時季を定めてした年次休暇請求に対して時季変更権の行使が許されるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られるものであり、この事業の正常な運営を妨げるかどうかの判断にあたっては、事業の規模、内容、その従業員の担当する業務の内容、性質、業務の繁閑、代替者の配置の難易等諸般の事情を考慮して決定すべきである。そして、事業が小規模で、従業員も小人数であることから代替勤務者が恒常的に不足する場合であっても、なお使用者において、従業員がその指定する時季に年次休暇を取れるように配置しておくべき義務があり、このような配慮をしないでした時季変更権の行使は違法というべきである。 これを、本件についてみると、前記認定のとおり、A協同組合においては、店長である債権者に差し支えがある場合に、債権者に代わってその事務を遂行してきた者は、債務者の代表者であるBだけであり(場合によっては代替者なしのままのときもあった)、その事務は、特別な専門的知識や技能を要するものではなく、むしろ小売商人である債務者の役員ないしは組合員であれば、容易に行えるものであり、組合員は日頃A協同組合の自己の占有部分である店舗にいて、各々の業務に従事しているものであるから特に遠隔地に赴く必要はなく、また、代替勤務につく場合にはそれぞれの固有の業務に専念できなくなるとしても、複数の役員ないしは組合員で輪番で担当する等によりその負担を軽減することができるものであったところ、債務者において、債権者が指定した時季が実父らと債権者らと控訴審での審理が行われる日であることを十分に知りながら、代替勤務員を確保することが容易であったにもかかわらず、何らの手立てを講じないままに直ちに時季変更権を行使していることが明らかであり、したがって、このような時季変更権の行使は違法であり、従業員である債権者においてこれに従う義務はなかったというべきである。 〔解雇-解雇権の濫用〕 債権者が債務者所有にかかるC市場の店舗賃借権の無断譲受人で、同所からの排除を求めて提起した訴訟の相手方の実子であるうえ、この訴訟を静観する立場をとらず積極的に支援する等いわば利敵行為を働いたことに嫌悪感をもち、時季変更に従わずに休暇を取ったということを口実に、債務者からの排除を企図して、本件解雇の意思表示をしたものと推認することができ、このような事情のもとにおいて従業員である債権者を解雇に処することは、著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認できないと言わざるを得ない。 よって、債務者のした解雇の意思表示は、解雇権の濫用であって、無効であるというべきである。 |