全 情 報

ID番号 05539
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 セイシン・ドライビングスクール事件
争点
事案概要  株式会社の使用人が監査役に選任されその後も従業員(学科指導員)としての職務を兼務していたのであるから従業員として勤務していたものとして退職金を請求した事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法11条
労働基準法3章
商法276条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
賃金(民事) / 退職金 / 競業避止と退職金
裁判年月日 1991年5月23日
裁判所名 静岡地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 508 
裁判結果 一部認容,一部棄却(控訴)
出典 タイムズ763号263頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-取締役・監査役〕
〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 商法二七六条によれば、株式会社の監査役は会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとされているが、その趣旨は、監査役の監査機関の性質上、取締役又は支配人その他の使用人から隔離し、その職務の公正を確保しようとするにあると解されるから、会社の使用人が監査役に選任され、その就任を承諾したときは、監査役との兼任が禁止された従前の地位を辞任したものと解するのが相当であり(最高裁第三小法廷平成元年九月一九日判決判例時報一三五四号一四九頁参照)、この理は、会社がいわゆる中小企業であっても何ら異なるところはないというべきである。
 したがって、原告が監査役就任後も従業員を兼務したことを理由として、従業員としての退職金を請求することは、監査役在任中に懲戒解雇の対象となるような行為があったか否かにかかわりなく、できないものというほかない。
〔賃金-退職金-競業避止と退職金〕
 原告が被告を退職した当時の被告の退職金規定がどのような内容のものであるかを明らかにする証拠はないが、
 〔中略〕
 被告の退職金規定には、退職した従業員に支給する退職金については、従業員の勤続期間、退職事由に応じて〈証拠〉のような定めがあったものと推認するに難くなく、
 〔中略〕
 原告のような一六年一〇月勤続の従業員が法律上の兼務禁止の事由により退職した場合には、退職時の基本給月額の一三・二〇月分支給するものと規定されていたものと認めるべく、
 〔中略〕
 原告の退職時の基本給月給は一八万五〇〇〇円であったと認められ、右認定に反する証拠はないから、原告が請求し得べき退職金は、計算上二四四万二〇〇〇円となる。