全 情 報

ID番号 05542
事件名 業務命令効力停止仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 阪神交通管理事件
争点
事案概要  高速道路の交通管理業務に従事する労働者の「勤務時間割」の変更につき、右労働者らが変更された「勤務時間割」による業務命令の効力停止の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 1991年6月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成3年 (ヨ) 307 
裁判結果 認容
出典 労経速報1431号5頁/労働判例592号23頁
審級関係
評釈論文 野間賢・労働法律旬報1274号51頁1991年10月25日
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 休憩に関し就業規則で定めるべき事項は、その時間(長さ)だけで足り、必ずしもその開始及び終了時刻を規定することを要せず、休憩の開始及び終了時刻を就業規則に規定せず個別的な業務命令をもって右時刻を設定する旨を定めたときは、そのような規定の仕方をすることに合理性があるかぎりにおいて労働者が右業務命令に従うべきことが具体的な労働契約の内容をなすものというべきである(労働基準法八九条一項一号)。
 これを本件についてみると、前記のとおり、交替勤務者の休憩時間は、一時間を下らない範囲において勤務時間割によって定める旨が就業規則に規定され、債務者は、就業規則による委任に基づき業務命令として休憩時間の長さ、開始時刻及び終了時刻を定めた勤務時間割を作成しているものである。そして、債務者の行う業務の内容からして、年々流動する交通情勢の変遷に従い、迅速かつ適切に休憩時間を設定する必要性が高いことが審尋の全趣旨から一応認められるから、債務者が就業規則において休憩時間の開始及び終了時刻を具体的に定めず、これを債務者の個別的な業務命令たる勤務時間割に委ねたこと自体には一応の合理性があるというべきである。したがって、債務者が就業規則に基づき休憩の開始及び終了時刻を個別に業務命令をもって定めたときは、原則として労働者はこれに従うべき義務を負うものというべきである。
 しかしながら、休憩時間は、労働時間の途中で労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間であるから(労基法三四条一項、三項)、その時間の長さのみならず、これを労働時間のどの時間帯に設定するかも、一般に労働条件に与える影響が少なくないというべきである。したがって、業務命令たる勤務時間割による休憩の開始及び終了時刻を変更することは、けっして無制約的に使用者の裁量に委ねられるものではなく、その変更につき業務上の必要性がないとき、あるいは業務上の必要性があっても、その変更が他の不当な動機、目的をもってなされたなど労使間の信義に著しく反するようなものであるときは、当該業務命令は、権利の濫用に当たるものとして、その効力を生じない場合があるというべきである。
 〔中略〕