ID番号 | : | 05556 |
事件名 | : | 公務外認定処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 地公災大阪支部長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 府立身体障害者福祉センターにおいて職業指導員として業務に従事中に、通路の鉄製の手すりで背中を強打して受傷し公務災害の認定を受けた者が、職場復帰後、自宅浴室のタイル床で転倒し、右事故の受傷部位を再び強打して受傷した者が、後者の事故による障害も公務上の災害であるとして争った事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法26条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 災害性の疾病 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性 |
裁判年月日 | : | 1991年4月23日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行コ) 20 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 労働民例集42巻2号205頁/タイムズ772号191頁/労働判例603号75頁/判例地方自治89号35頁 |
審級関係 | : | 一審/05697/大阪地/平 1. 6.12/昭和59年(行ウ)63号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-災害性の疾病〕 (一) 地方公務員の負傷に起因する疾病が地方公務員災害補償法上の「公務上の疾病」というため、すなわち公務員の疾病に公務起因性があるというためには、公務上の災害と負傷との間及び負傷と疾病との間にそれぞれ相当因果関係があることが必要であるが、当該公務員が基礎疾病や既存疾病を有している場合には、公務上の災害がこれらを誘発又は急激に増悪させて発症を早める等、それが基礎疾病等と共働原因となって疾病をもたらした場合には右相当因果関係があるというべきである。 (二) これを本件についてみるに、控訴人には第一事故前に基礎疾病としてレックリング病に合併した脊柱の変形による軽度の神経障害があったところ、公務上の災害である第一事故によって変形部位を強打したことによって圧迫性脊髄障害を高度に惹起したのであるから、右打撲が右基礎疾病と共働して右障害を惹起したものと認められ、これに公務起因性が認められることは明らかである(被控訴人も第一事故による傷害を公務災害と認定している。)。 次に、前記4で認定したとおり控訴人は右基礎疾病による軽度の神経障害があったものの、主として第一事故による脊髄損傷に基づく神経障害(下肢の運動知覚障害)が未だに中等度存在して通院治療を継続中であったところ、前記1、(九)で認定したとおり入浴の際両下肢の筋力低下や知覚鈍麻等の運動知覚障害のため、体のバランスを失って片足が前に滑り、踏み止まろうとした後足に力が入らずに後ろに転倒し、第一事故で打撲した箇所と同一箇所を再度強打して高度の神経障害である本件障害を惹起したものである。 そこで、公務に起因する第一事故による障害と本件障害との間の相当因果関係の存否について検討するに、本件事故は右のとおり下肢の運動知覚障害が原因となって惹起されたものであるところ、右運動知覚障害は、その中に基礎疾病たるレックリング病に合併した脊柱の変形による軽度の神経障害が存在しているとはいえ、主として通院治療中の第一事故に基づくものと解されること(換言すれば、仮に第一事故に基づく下肢の筋力低下や知覚鈍麻等の運動知覚障害が存在しなかったならば、本件のような転倒打撲事故は生じなかったものと考えられること)、一般的に同一箇所を再度打撲すれば機能障害はより高度になるところ、本件事故により第一事故時の受傷部位と同一の部位を再度打撲したことにより、第一事故がなかったならば生じたはずの障害よりも高度の障害を生じたものと推定されること、前記のとおり鑑定人も本件傷害は第一事故による神経障害が本件事故により助長悪化したもので別の損傷とは考えられない旨鑑定していること及び入浴が社会生活上不可欠な通常の行動であって、その際控訴人に落度があったとは認められないことに照らせば、第一事故による傷害及びこれによる下肢の運動知覚障害が共働原因となって本件障害を惹起したものというべく、公務に起因する負傷(第一事故)と本件障害との間に相当因果関係があるというべきである。そうすると、本件障害には公務起因性があるといわねばならない。 |