ID番号 | : | 05568 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | ネッスル事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働組合の内部対立から二つの労働者集団が対立し、それぞれ別個独立の組合活動を営み二つの組合が併存するに至つた場合において、使用者が一方の組合の存在を否定し、団交を拒否し、右組合および同組合の組合員がチェックオフの中止を申し入れたにもかかわらず、元の組合とのチェックオフ協定に基づいてチェックオフしてこれを元の組合に交付していることをそれぞれ団交拒否、一方の組合の組合員に対する不利益取扱い、同組合に対する支配介入であるとした不当労働行為であるとした労委の救済命令の取消請求がなされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条1項 労働組合法16条 労働組合法7条1号 労働組合法7条3号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / チェックオフ |
裁判年月日 | : | 1991年6月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成1年 (行コ) 136 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(上告) |
出典 | : | 労働民例集42巻3号487頁/時報1401号124頁 |
審級関係 | : | 一審/04799/東京地/平 1.12. 7/昭和61年(行ウ)67号 |
評釈論文 | : | 原田保孝・平成4年度主要民事判例解説〔判例タイムズ821〕334~335頁1993年9月/小宮文人・法学セミナー37巻8号141頁1992年8月/青野覚・季刊労働法164号207~210頁1992年8月 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の支払い原則-チェックオフ〕 「控訴人は、チェックオフは、組合が自己の組合費債権の取立を雇用主に委任するものであり、個々の組合員の同意は不要であって、組合員の個々の意思表示によりこれを排除することはできないと主張する。確かに、チェックオフにおいて、組合と雇用主との関係は取立委任契約と見るべきではあるけれども、それだけで法律効果を生ずるのではなく、組合員と雇用主との関係において、組合員から雇用主に対し支払を委任する契約が併存することによってはじめて三者間に法律効果が生ずるものと解すべきである。そして、チェックオフは、組合員個々の賃金請求権に関するものであって、労働組合法一六条の「労働条件その他の労働者の待遇に関する」ものということはできないから、組合と雇用主との間にチェックオフ協定があるからといって、いわゆる規範的効力によって組合員から雇用主に対する支払委任の効力を持つものとは解し難い。したがって、チェックオフのうち右支払委任の面では、組合員の個々の同意(もっとも、必ずしも明示的である必要はない。)が必要であり、また、個々の組合員は、特段の事情がない限りは、右同意をいつでも撤回することができるものと解すべきである(なお、労働基準法二四条一項但書の規定は、雇用主に対して免罰的効力(同法一二〇条一号の罪)を与えるものに過ぎず、右規定をもって、労働組合との間でチェックオフ協定がある場合に組合員がこれに拘束されるとの私法上の法律効果の根拠と解することができないのはいうまでもない。) 〔中略〕「同一企業内に複数の労働組合が併存する場合は、使用者は、各組合の団結権を平等に承認、尊重し、各組合に対して中立定立場を取るべき中立保持義務があるところ、前記認定のとおり、控訴人は頑なに参加人組合及び参加人支部の存在を否定してきていて団交にも一切応ぜず、団交を要求する書面も参加人組合等に送り返すという態度を取り続けてきたこと、チェックオフについても、参加人組合及び参加人支部において、度々控訴人に対しチェックオフの中止を申し入れ、昭和五八年九月には、参加人支部に所属するという組合員自身も、それぞれAを代表者とする組合の組合員ではないから直ちにチェックオフを中止するよう控訴人に対し書面で申入れをしたにもかかわらず、これらの申し入れを無視し、あえて右のように参加人組合所属の組合員であると主張する組合員から組合費相当額を控除し、しかも右組合費を供託する等の手続をとることもなく、参加人支部と対立的立場にある訴外支部に引き渡していること等前記認定の諸事実を考え併せると、」を加え、同末行の「ものであるといわざる」を「意図のもとに行われたものと推認せざる」と改める。 |