ID番号 | : | 05625 |
事件名 | : | 船員保険被保険者資格確認請求却下処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ワールドマリン・レオニス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一等航海士として乗船中に負傷した者が、船員保険法の被保険者資格(同法一七条)を否定した東京都知事の処分を争った事例。 |
参照法条 | : | 船員法1条 船員法2条 船員法5条 船員保険法10条 船員保険法17条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 傭船契約 |
裁判年月日 | : | 1991年12月5日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和61年 (行ウ) 148 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 時報1406号113頁/労働判例599号31頁/判例地方自治93号49頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-使用者-傭船契約〕 原告は、近代海運企業においては、労働者たる船員の継続的雇用を前提として雇用契約を締結し、その後に雇入契約を締結して特定船舶に乗り組むという形態が一般化しており、雇入契約は雇用契約と別個独立の契約ではなく、乗船条件についての船員からの確認的同意に過ぎないから、船員保険法の適用に当たっても雇用契約の相手方を「船舶所有者」とみるべきであると主張する。 我が国の海運企業が、船舶を特定しないで船員との継続的な雇用契約を締結し、一般的な乗船中の労働条件は雇用契約中に確定し、特定船舶への乗船ごとに乗船中必要な具体的労働条件の合意をするという形態を取っているとしても、それは雇用契約を締結した企業が船舶所有者等である船舶に乗船する場合に限られているはずである。このような形態を取る船員は、予備船員制度により雇用契約の締結を基準として船員法上の船員となるとされており、雇用契約の相手方が船舶所有者等である船舶に乗船するときには、船員法に定める雇入契約という形での合意をしなくとも船員法及び船員保険法の適用に特段の問題が生じることはない。しかし、このように継続的に雇用されている者であっても、雇用契約の相手方以外の者が船舶所有者等である船舶に乗船する場合には、前述の海上労働の特殊性に鑑みると、あらためて労働条件を決定する雇入契約を締結することが不可欠であると考えられる。したがって、原告主張のような形態の船員が多いからといって、雇入契約の性質が原告主張のように変貌して現在においては意味を持たなくなったということはできず、船員たる身分の取得及び船員保険の適用について原則として雇入契約の締結を基準とするとの現行法の解釈を変更することはできない。〔中略〕 原告は、船員保険法上の補償が船員法による災害補償責任の責任保険たる性質をもつことを根拠としているが、船員法が「船舶所有者」に災害補償責任を認めている実質的根拠は、船員が生計を立てるために災害の危険を内在する企業に雇用される一方、「船舶所有者」が船員を自己の支配下に置き、その労働力によって利益を得ていることから、労働災害が発生した場合には、「船舶所有者」の支配領域内での危険の顕在化として、船員に生じた損害を補償すべきものとするところにあると解される。本件において、危険領域たる船舶とその運航の組織体を支配しているのは、船舶賃借人たるA会社であり、また、B船の運航による利益の帰属するところもA会社であって、C会社ではないというべきであるから、右のような実質的根拠から考えても原告の右の主張は、理由がない。 |