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ID番号 05644
事件名 災害補償実施勧告取消事件
いわゆる事件名 青森労基署長事件
争点
事案概要  使用者が、労基署長がなした労働者のこうむった災害を業務上と認め災害補償をなすべきであるとの勧告の取消を求めた事例。
参照法条 労働基準法85条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法
裁判年月日 1952年3月24日
裁判所名 青森地
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (行) 39 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集3巻1号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕
 按ずるに原告の本訴請求は、被告が原告団青森県支部職員Aの交通事故による死亡を業務上の死亡と認めて労働基準法に基ずき原告に対してなした災害補償審査決定並びに之に対する原告の不服の申立に対する青森労働者災害審査会の審査を違法とし、被告のなした審査の取消を求めると謂うのであるが、この審査決定は災害補償に関する紛争を早急に解決するため民事訴訟提起前監督機関たる労働基準監督署長労働者災害補償審査会のなす勧告的処分に過ぎず単に民事訴訟を提起する前提要件とはなるが紛争を法的拘束力を以て解決する力はなく何等国民の権利義務に直接具体的に効果を及ぼすものではない。
 尤も原告主張のように労働基準法第百十九条第一号によれば使用者が同法第七十九条第八十条に定める災害補償又は葬祭料の支払の義務を怠るときは処罰せられることは明かであるがその支払義務があるかどうかは客観的事実により結局は裁判所の認定によるべきであり従つて仮令労働基準監督署長又は労働者災害補償審査会の審査が間違つて居て使用者に災害補償の義務がないのに之あるものと認定してその支払を勧告したとしても使用者がその審査に従はないことの一事を以て直ちに処罰せられることはないものと謂うべきである。労働基準法第八十五条第八十六条の審査は飽くまでも勧告的な性質しかないものであり災害補償をなすべき法律上の義務を負担させる法的効果を持つものでないからいわゆる抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しないと解するのが相当である。