ID番号 | : | 05650 |
事件名 | : | 遺族補償額決定取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 宮城労災補償審査会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 伐木作業中負傷し死亡した労働者について遺族補償の決定をして労基署長の決定等を争って被災者の使用者が争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法85条 労働基準法86条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法 |
裁判年月日 | : | 1953年2月11日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和27年 (ネ) 304 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働民例集4巻1号26頁 |
審級関係 | : | 一審/仙台地/ . ./昭和27年(行)12号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕 控訴人は被控訴人等がした右各審査の結果の取消を求めるので、右審査の結果が果して取消又は変更を求める訴(いわゆる抗告訴訟)の対象となり得るかどうかについて判断する。いうまでもなく訴により取消又は変更を求め得る行政処分は、それが関係者の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなければならない。従つて行政庁の行為であつても、それが単に関係者に対する勧告的性質を有するに止まり、これによつて関係者の権利義務に法律上の効果を及ぼさないようなものは、訴によりこれが取消変更を求める法律上の利益はないわけであつて、取消又は変更を求める訴の対象とはなり得ないものと解すべきである。 ところで労働基準法第七十五条以下の規定による災害補償に関する労働者と使用者との権利義務関係は各法条にあてはまる事実の生じたとき法律上当然に発生するのであつて、その権利義務の発生につき、行政庁による何等かの処分の介在を要件とするものではない。このことは本件で問題となつている同法第七十九条による補償関係即ち労働者が業務上死亡した場合における遺族補償に関する使用者と労働者の遺族との権利義務関係についても同様である。たゞ同法第八十五条及び第八十六条によると、業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定、その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して審査又は事件の仲裁を請求することができるし、この審査又は仲裁の結果に不服のある者は労働者災害補償審査会の審査又は仲裁を請求することができる旨を規定し、且つ労働基準法による災害補償に関する事項について民事訴訟を提起するには、労働者災害補償審査会の審査又は仲裁を経なければならないと定めているが、右は一般に経済力の豊かでない労働者側の立場を考慮し災害補償に関する紛争を行政機関の手によつて、できるだけ簡易迅速に解決することを狙いとし、行政庁の審査又は仲裁を経ることをもつて、民事訴訟提起の前提要件としたに外ならないものと解し得る。即ち労働基準監督署長又は労働者災害補償審査会が前記法条によつて行う審査又は仲裁の結果は、単に当該行政庁がその判断に基いて関係者に対し災害補償に関する紛議の解決を慫慂する勧告的性質を有するに過ぎないものであつて、これにより本来法律上存在し又は存在しない労働者側と使用者側との権利義務関係に格別の影響を及ぼすものではない。関係者が行政庁の審査又は仲裁の結果をその自由意思によつて納得し、災害補償に関する紛議が解決すればともかく、さもないかぎり紛争の解決は結局民事訴訟による司法的判断にまつ外はないものというべきである。 以上説明の次第で労働基準監督署長及び労働者災害補償審査会の審査又は仲裁の結果は、関係者の権利義務に法律上の効果を及ぼすものではなく、所謂抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しないものと解すべきである。 |