ID番号 | : | 05667 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 航空自衛隊航空実験隊事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 航空自衛隊員が海上における救難訓練中に支給された救命胴衣を同僚隊員に貸し与えて返還を求めず、自力で遊泳中に溺死した事故につき遺族が国に対して損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1978年11月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ワ) 10936 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | タイムズ394号116頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 続いてヘリコプターは、浮舟で漂流中の亡Aを吊り上げたが、この時同人はB二尉から救命胴衣の返還を受けていなかつた。吊り上げられた亡Aは、ヘリコプター内において、メデイツク(救難降下員)から吊り降ろしに必要な手順の説明を受けるとともに、「救命胴衣をつけていないが大丈夫か」などとジエスチヤーまじりで尋ねられたところ、同人は大丈夫である旨答えたため、メデイツクは吊り降ろしの作業に入つた。 6 機内でこうした説明等を受ける間も、亡Aはメデイツクに何ら不安を感じさせる態度を示さず、その行動は自信にあふれており、着水して吊り環から脱する手順も極めて冷静沈着に行なつた。 7 亡Aは、巡視艇から約一〇メートルの海上に着水した後メデイツクに大丈夫との合図を送り、吊り環から脱し、救難用の巡視艇に向つて二、三回平泳ぎの格好で泳ぎ始めたものの、すぐに手を上げるようにして海中に没し始めた。 8 巡視艇上で異常を察知した訓練指揮官の命令で巡視艇にいた同僚二名が救助のため海に飛び込み、亡Aの救助に向つたが、救助員が到着する前に亡Aは海中に沈んでしまい、救助することができなかつた。 9 亡Aは、同日午後一時五三分ころ、溺死体で発見された。 10 事故当日の天候及び海象状況は、雲低三、〇〇〇フイート、雲量一〇分の四、視程四マイル、風向三〇〇度、風速二ノツト、海水温度二七度、風浪一で良好な状態であつた。 11 また、亡Aの当時の水泳能力は、一〇メートル内外であつた。 以上の事実によれば、本件事故の原因は、亡Aが、本件訓練に際し、救命胴衣を支給されていたにもかかわらず、これをB二尉に貸与したままその返還を求めず、ヘリコプターから海上に吊り降ろされるにあたつて、メデイツクから救命胴衣なしで大丈夫かどうか確認された際に拒否することなく、自らの意思により救命胴衣なしでの吊り降ろしを了解し、吊り降ろされたことにあるというほかなく、本件事故は、ひとえに亡A自らの過失によるものというべきである。 |