全 情 報

ID番号 05670
事件名 労災補償決定取消請求控訴事件
いわゆる事件名 山口労災保険審査会事件
争点
事案概要  作業中右眼を負傷し、後に障害等級九級(後に七級)に該当するとの判断を受けた者が右等級該当性を争った事例。
参照法条 労働基準法77条
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
裁判年月日 1953年6月2日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (ネ) 26 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集4巻3号75頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 控訴人が昭和十五年十月から小野田市桜山炭坑に仕操夫として雇われており、昭和二十三年十一月十二日同坑内で採炭作業中右眼に傷害を受けたこと。昭和二十四年七月二十九日小野田労働基準監督署長が、右右眼の障害等級を、労働者災害補償保険法施行規則(以下単に規則と略称する)別表〔略〕第一の第九級と決定したこと。控訴人が、その後外傷性神経症の疑のもとに右署長の再発認定を受け、昭和二十五年二月一日A病院に入院加療中同年八月十四日頭部外傷後貽症(歩行障害)と診断されたこと、これに基き、前記署長が、同年同月二十五日右災害の障害等級を規則別表第一の第八級とし、前記右眼の傷害もあるので規則第六条第三項第一号により、原告の障害等級を規則別表第一の第七級と決定したこと、控訴人が、右決定に対し保険審査官及び被控訴人に夫々審査を請求し、被控訴人が、昭和二十六年八月六日右小野田労働基準監督署長の決定を認めて控訴人の審査請求を排斥したことは当事者間に争がない。
 そこで小野田労働基準監督署長が決定をした右昭和二十五年八月二十五日当時の控訴人の頭部外傷後貽症(歩行障害)について考察するに、〔中略〕両下肢には筋萎縮及び筋肉の硬直なく、腱反射は中等度に亢進するが足交代膝蓋交代が認められず、時に右側にバビンスキー氏現象を示すことはあつたが病的反射は一般に認められず、深部感覚は左側に稍々障害があつたが一般に正常で、表面知覚に異常は認められなかつたこと。歩行は鶏状歩行をし且つ一見痙性歩行を思わせる一種独特の歩行をし、歩行運動に際し両下肢特に大腿諸筋は屈伸とも粗大な震顫を示し、特に体重のかかる場合に増強し、精神的緊張により軽度に増悪すること。右歩行障害は頭部外傷に由来する外傷性神経症に基くものであるが、神経系統に器質的変化なしとは断定し得ないこと。この歩行障害のため軽易な労務の外服することができないことが認められ、〔中略〕控訴人の右歩行障害は業務上の事由によるものであつたとしても、その障害等級は規則別表第一の第八級三号に該当するに過ぎないものである。
 控訴人は、右歩行障害は、規則第六条第四項により同別表〔略〕第一の第六級六号に該当すると主張するが、本件障害は前認定のとおりであつて一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したものではなく又これに準ずべきものでもないから、右主張は採用し得ない。